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5分待ってて
「5分で何が出来ると思う?」
幼なじみの透は、いきなり俺の部屋へ押しかけてきて、そう聞いてきた。
「カップうどん?」
「ブッブー! つまんねー答え」
透はしかめっ面で手を出した。
「じゃあ、スマホ貸して」
俺のスマホを取り上げて、5分、タイマーをセットした。
「5分間、黙って見てて」
タイマーが、50、49、48……。
だんだんと残りの秒数が減っていく。
透は思い切りよくTシャツとズボンを脱ぎ捨てて、持参した紙袋の中から取り出した空色のシャツワンピースを着ると、肩までのボブのウィッグを身につけた。
手鏡を取り出して、形の良い唇に桃色のリップを塗った。
ピリリリっと、タイマーが鳴った。
そこには、見慣れない姿の透がいる。
スカーフか何かで喉仏を隠せば、女の子に見えなくもない。
「和馬が好き」
いつもより高い声で告げられた告白。
緊張しているのか、少し震えてる。
「あと5分待って」
俺はそう答えた。
乱暴に、透の唇を掌で拭ってリップを落として、ウィッグを剥ぎ取って、シャツワンピースを脱がした。
泣きそうな顔をしている透に、床から拾ったTシャツとズボンを差し出した。
「着て」
渋々と、透はそれを身につけた。
いつもの透がそこにいた。
大きな目には、今にも溢れそうに、水滴が光ってる。
「馬鹿だな。女の子になんかならなくても、そのまんまの透が好きだよ」
そう言ったら、泣き虫な透は、やっぱり泣いた。
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