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 占い師の言う通り、俺はすぐに浮気される。  浮気されるのは嫌だ。  嫌だから、やめて欲しいと言った。相手を責め、行動を細かく監視した。すると、相手は決まって「もう疲れた。別れよう」と言って俺を捨てた。  俺は相手を責めるのをやめることにした。俺の何がいけないのか、駄目なところはなおすと言って情けなく縋った。でも、結局、「重い」「面倒くさい」と言われてフラれた。  そして、現在。  俺は翔が浮気していることは知っているけれど、何も言わない。何度浮気しても最後には俺の元に戻ってくると信じて、何も言わない。  でも、翔は戻っては来ない。  物理的には家に帰ってくる。でも、心の距離はどんどん離れていく。もう肉眼では見えないほど遠くに。    翔の中にもう俺はいない。  それでも、俺は翔から離れられなかった。  お互いがお互いを好きだった時のこと、幸せだった毎日が忘れられなくて。いつかあの日々が帰ってくるんじゃないかと期待してしまって。  典型的な幸せになれないタイプの男。  それが、俺だった。  たぶん、俺は心も身体も大人になった。  ちゃんと自分の感情をコントロール出来るし、自然に愛想を振りまいたり、内心ムカついていても笑って接したり、要は大人なら出来ないと困ることは一通り出来る。学生時代より卑屈じゃなくなったし、性格は全体的に良くなったと思う。  でも、それが、恐らく恋愛においては裏目に出てしまっている。  駄目な男とばかり付き合う、駄目な男をもっと駄目にする。だから、絶対に幸せになれない。  自分でもよく分からない。  優しくて大切にしてくれそうな人を選んでいるつもり。でも、たぶんちゃんと選べてないんだろう。  無闇矢鱈に色んな人と関係を持っているわけでもないのに、上手くいかない。  過去には殴られたり金をむしり取られそうになったり、酷い目にあったことがあるから、それに比べたら今の翔はたぶん良い人。比較対象が酷すぎるけど。それも分かってるんだけど。    いつものように、スーパーの買い物袋を片手に帰宅した。翔はもちろんまだ帰ってきていない。  冷蔵庫に手早く物をしまって、直ぐに夕飯の準備に取り掛かった。    相変わらず、夕飯は2人分作ってしまう。  翔が早く帰ってきて、俺と一緒にご飯を食べることになる……なんてことはもう無いんだけど。  一緒に住み始めてすぐの頃は、俺の作る料理を美味しいと言って喜んで食べてくれた。  いつからだろう。一緒に夕飯を食べなくなったのは。翔が俺を見て優しく笑わなくなったのは。  翔の分の夕飯をラップして、ダイニングテーブルに置いておく。きっと朝までこのままだろうけど。  今日、翔は帰ってくるだろうか。  帰ってこないだろうな、とこれもすぐ答えは出る。  お風呂に入って、ぼーっとテレビを観て、気が付いたらもう0時。 「お誕生日おめでとー……」  小さく、つぶやいた。  誰にも祝ってもらえないから、自分で祝うしかない。めちゃくちゃ悲しいやつ、と笑ってしまう。  くだらないことやってないで、明日も仕事だからもう寝ないと。
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