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 図書館からマックまでの道中も、大林先輩はベラベラ喋りっぱなしだった。  髪染めた?彼氏出来た?部活は?……等々、質問もいちいちウザい。 「えー!帰宅部ってどうしちゃったの。あれ、中学の時はサッカー部だっけ?」 「水泳ですけど」  全然俺のこと知らないな、この人。 「あ、そうだっけ?何で高校で水泳部入らねえの?」 「別に。面倒臭いから」 「絶対入った方がいいって!高校の部活、マジ楽しいから!」    そんなの、どうでもいい。  今の俺は高校生活に楽しさなんて求めてないから。 「全部投げ出すのはやめろよ」  急に静かなトーンで言うから、思わず先輩の顔を見た。  それは、中学時代からたまに先輩が俺に向けていた顔。俺を憐れむような表情。 「一つ上手くいかなかったからって、全部やめるのはもったいない。続けられることは続けた方がいいって。絶対」  嫌いだ、その顔。  そんな分かったような口をきく人間も。 「は……何様」  ぼろっと、俺の口から声がこぼれた。  あ、まずい、さすがに怒られるかなと思ったら、先輩はふふん、とふざけたように笑って「大林様」と胸を張って言った。  やっぱり嫌いだ、この人。  マックに着いて、注文の順番待ちの列に並ぶ。 「心配しなくても奢ってやんねえから遠慮せずに食え」  耳を疑うようなセリフだ。「クソ野郎だな……」 「先輩に向かってクソ野郎はおやめなさい」  強引にマックに連れてきて、奢らねえけど好きなだけ食えとほざく先輩をクソ野郎と言わないなら何をクソ野郎と言えばいいんだ、とは面倒だから言わない。  そうこうしているうちに順番が回ってきたので、俺が先に注文をする。 「えー……エビフィレオと……」 「エビフィレオ食うの?かーわいー」 「ポテトのМサイズで、はい」 「は、男だろ。Lにしとけよ」 「いえ、Мでいいです。はい。ドリンクはコーラのМで。はい」 「コーラ飲むと骨が溶けるって嘘らしいぜ」 「あああうるさいな!」  この男、黙るってことが出来ないのか。  俺が財布から札を出そうとすると、先輩がそれを取り上げた。「すみません、あと、ビックマックとポテトのLとコーラのL。以上で」  まさか、自分の分も俺に払わせる気か?  意味が分からないという顔をしている俺を見て、先輩がブッと笑った。 「お前、マジで俺が奢らねえと思ってたの?可愛いとこあるじゃん」  先輩は俺に財布を返すと、自分の財布で会計を済ませた。  めちゃくちゃ腹が立つ……なんだ、こいつ……。 「あはは、ムカつくって顔してる。分かりやすいね~三ノ輪くんは」  無性に殴りたい。
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