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 高校生の頃から彼女がいた先輩が男と死ぬまで過ごす選択をするとは思えなかった。  変な人だけど堅実で正しい道を選んできた人だ。  現実はそんなもん。  綺麗事ばかり言わないで欲しい。 「何で今、そんなの決めないといけないんだよ」先輩の口調は冷静なままだった。「男とか女とか関係ない。俺は一緒にずっといたいと思った人と一緒にいたい。それがたまたま男だったならそれでいい」 「そんなの」  建前だ。  聞こえがいい建前。 「でも、俺はまだないんだわ」先輩はふっと笑う。「一緒にいたいと思った人と付き合えたこと、まだ1度もない」 「でも、先輩は、」 「うるさいな。簡単には見つからねぇよ。ゲイとかバイとか関係ない。だから、焦らなくていい。辛い時は少し休めばいい。恋人がいなくても死ぬわけでもないし」  俺は涙を拭い、黙って先輩が机の上に置いてくれたコップの麦茶を飲んだ。  俺は、恋人がいないのは寂しい。  心を許せる友達がいない代わりに、自分を無償で愛してくる人がそばにいて欲しい。  だから、そう、先輩の言う通りだ。  いつも焦ってるんだと思う。  恋人という存在がただただ欲しくて、その結果がこれだ。  くだらない恋愛をして傷ついて。  もういい歳なんだし、少し落ち着いてまともな恋愛をするようにしないと…… 「あ、お前、明日、会社休むと思うけど」 「え、え、待って、俺、会社?休む?」 「当たり前だろ。あのクソ野郎がいない間にあっちの家にあるお前の荷物、最低限でいいからこっちに持ってこい。そうだ、あっちのマンションの契約はどうなってんの?」 「な、なに、どういうこと?」 「どういうことって」  先輩は真顔で言った。 「お前、今日から俺と住むだろ?いやぁ、楽しみ、これから毎日健康的な朝ごはんが食えるんだな」     
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