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「一緒に寝る?」  ふざけた口調で言ったら綺麗に無視された。  当たり前のようにソファに向かう三ノ輪に俺はちょこまかとついて行く。 「そのソファ、良いやつだから寝心地はいいと思うけど、あいにく布団がないんですよ、お客様。掛け布団が……」 「何か上着を貸してください」 「は?今から外行くの?」 「掛け布団代わりにします」 「俺のベット大きいよ?男二人で余裕で寝れる」 「上着、貸してください」 「貸さないよ。そのソファは寝る場所じゃない。疲れも取れない。お前、自分から俺に電話してきたんだからそれくらい言うこと聞け」  急に真面目に返答した俺に驚いたのか三ノ輪は俺の顔をちらりと見た。 「なに、その目は」 「……別に」 「一緒に寝たら、俺に何かされるとでも思ってんの?」 「そんなことしたら警察呼びます」 「するわけないだろ。ほら寝るぞ。俺、明日も仕事だしお前はプチ引越しだ」  三ノ輪はその後もブツブツ言っていたが、もうこれ以上は抵抗出来ないと思ったようで最終的に俺の寝室についてきた。  暗い寝室、ベッドの上に2人仲良く横になる。 「……寝れそ?」 「先輩がベラベラ喋らなかったら寝れると思います」 「はいはい、心配してやってんのに相変わらず酷い言い方すんだね、君は」  三ノ輪が寝返って俺に背中を向けた。  無言の時間が過ぎていく。  このまま寝るのかなと思って本格的に寝る体勢に入ろうとしたところで、三ノ輪が口を開いた。 「……なんか、夢だったのかなって思って、苦しくなくなりました」 「……ほう」 「翔のことは好き、だったけど、最後は依存というか、ただ1人になりたくなかっただけだったんで」 「じゃあ、今も1人ではないから良かったね」  三ノ輪は何も答えなかった。  代わりに、鼻をすするような音が聞こえた気がしたけれど、聞き間違いかもしれない。  次の日、朝起きたら三ノ輪はまだ寝ていた。  すやすやと子どものような顔に思わず笑いそうになる。  あーあ、今日はお手製の朝ご飯はなしか……なんて残念に思いながら、俺は三ノ輪を起こさないようそっとベッドから出た。 食パンを2枚トースターに入れ、フライパンにバター2かけと卵3個を投入。目玉焼きはあまり好きじゃないので、豪快に箸でスクランブルエッグにしてしまう。雑に塩コショウをして完成。 ヨーグルトとみかんを2つ、冷蔵庫から取り出してテーブルに並べた。 「おはよ、ございます……」 ちょうど、朝ごはんの準備が終わる頃に三ノ輪が起きてきた。 「あーあ、俺が優しく起こしてあげようと思ってたのに。勝手に起きてきちゃったの?」 「勝手にって、なんですか」三ノ輪がテーブルの上の朝ごはんに気がついた。「え、朝ごはん……」 「うん、朝ごはん」 「俺、朝は食べられないって……」 「うん、言ってたね」 「じゃあ……」 「でも、食べた方がいいじゃん」 「いや、でも」 「残してもいいからちょっとだけ食べよ」 「……はい」
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