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食パン半分とヨーグルトを食べた三ノ輪は苦しそうに顔をしかめていた。
「明日は三ノ輪くんの手作りの朝ごはんがいいなぁ」
「……会社行かなくていいんですか」
「行くよ?ちなみに、俺の話は聞いてる?」
「お皿、洗っておくので早く行ってください」
結局、俺は半分追い出されるように家を出た。自分の家なのに腑に落ちないけど、まぁいい。
電車の中で今日の予定を確認する。昨日は色んなことがあったから驚いたけど、それはそれ、これはこれ。仕事はちゃんとしないといけない。
「あー、大林〜おい、聞いてくれよ」
会社のエレベーター前で声をかけられた。「内海……」
同棲している恋人が家を飛び出したにも関わらず、顔色は良さそうだ。まぁ予想通りだが。
「昨日はもうサイテーだよ、サイテー。浮気相手に彼女いんのバレた」
あーあ、せっかく仕事のモードに入っていたのに全て台無し。
「……なに、浮気相手に彼女いることを黙ってたってこと?」
「そー。ちょっと依存体質でさ。面倒くさそうだから彼女いんの黙ってたの。そんで、昨日、家で彼女と寝てたら、乱入してきた」
彼女と寝てたら、乱入……?
乱入したのは、三ノ輪だよな?
「勝手にショック受けた顔してんの。いやいや、そもそもお前は本命じゃないっての。気が向いた時に抱いてやるからそれで満足してくれって話。ほんと面倒くさいわ」
「じゃあさ」
エレベーターが来たので2人で乗り込む。
「うん?」
「そのめんどくせぇ浮気相手、俺がもらっても文句ないよな」
「え?」
「失った魚は案外大きいかもよ」エレベーターのドアが開く。俺の降りる階だ。「まぁ、あとで返してって泣きわめいても知らねぇから」
内海の顔は見ずに、俺はエレベーターを降りた。
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