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゜゜゜  自分の性格の悪さは自分でもよく分かっていた。  素直じゃないし、ひねくれてるし、可愛げもない。  もし、素の自分を好きになってもらえたら……それはとても幸せなことだろう。でも、人生そんなに上手くはいかない。  だからと言って完璧に良い人を演じられるほど俺は器用でもなかったし、客観的に見る自分がそれを決して許さなかった。  良い人でもないのに、良い人を演じることを許せなかった。    その結果、出来上がったのは腹黒いぶりっ子。 ――こんなので楓先輩の心をつかめると思ってるの?  もう一人の自分が嘲笑うように話しかけてくる。 ――ねえ、もうとっくに気付いてるんでしょ? ………… 「それ、本気で言ってるんですか?」  楓先輩からそれを聞いたのは、文化祭が終わってすぐだった。 「うん、まぁ、別にそこまでこだわりがあったわけでもないから」 「でも、先輩、ずっと藤崎に行きたいって……」 「ちょっとカッコいいなって思ってただけだよ」  楓先輩はずっと、高校は藤崎学園を目指していると言っていた。  藤崎学園は有名私立中高一貫校で、ほとんどの人が中学受験をして入学するので、高校受験のレベルは異常に高かった。  でも、楓先輩の学力なら全然狙えるレベルだ。  俺は先輩が藤崎学園を狙っていることを知っていたので、自分も同じ学校に入るために今から頑張って勉強をしていたのに。 「どうしてですか?」 「入学したとしても、中学から藤崎にいる人たちに追いつくのがめちゃくちゃ大変らしいんだよね。ちょっと、それはしんどいかなぁって」  嘘つき。  俺は分かってる。  先輩はどうしても、千夏先輩と同じ高校に行きたかったんでしょ。  あんな冴えない男の動向にあなたの人生はいつも左右されてるんでしょ。  いつまであの人に振り回されるつもりなの?  本当にそれでいいの?  でも、それは言わない。  言ったところで、楓先輩の考えが変わるとは思えないから。  悔しい。  何も努力していないくせに、楓先輩にここまで注目されて、愛されている千夏先輩に腹が立つ。  俺の方がこんなにも想っているのに。  こんなにも努力しているのに。
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