2人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、やっぱり先生は先生だ、としみじみと思った。
みゃあみゃあ鳴くだけの子猫を見て、それが私だと気がついてくれた。
「子猫を助けようとして、いくつかの時空魔法を一斉に発動して、その時にその子猫とメイさんの精神も入れ替わってしまったと考えるのが、妥当なところでしょう。」
先生は溜息をついた。
「問題は、どんな順番で、どんな魔法が発動されたかになりますね。」
あと5分あれば―多分、この時、5分間だけ時間を戻したんだと思う。
すぐにでも助けたいーそう思ったから、距離を飛び越えたんだと思う。
あれー?
それだけで、どうして精神が入れ替わったんだろう。
「本人に聞くのが一番なのですが…」
先生は子猫の私をそっと撫でた。
「この子猫、生まれて間もないですね。と言うことは、まだ、思考を読み取ることは出来ません。目も開いてないのだから、記憶をたどることも出来ませんし…。メイさんの体の中には、この子猫の精神が入っているのでしょうが、おそらく、言葉を理解はしていないでしょうから、人との意思疎通は全く不可能でしょう。」
えっと、先生、私はどうなるのでしょうか。
「先生、それって現状では、メイは元に戻らないってことですか?」
海が言った。
「そうですね。少なくとも、目が明いて、人の言葉を理解できないことには、メイさんには伝える術はないし、私たちも知る術はありません。因みに、メイさんの中にいる子猫からも何も得られないでしょう。」
つまり、しばらく、心は子猫の私の体と心は私の子猫のままってことらしい。
うん、困った。
私はどうすればいいのでしょうか。
色々と不便だし、それに、中身が子猫の私じゃあ、家にも帰れない。
さらに、追い打ちをかけるようにアリスが言った。
「あ、来週から定期テストじゃなかったっけ?」
ちょっと目の前が暗くなったような気がしたのは、子猫の目が開いてないからだけじゃないと思う。
最初のコメントを投稿しよう!