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「…あれ?」
急に視界が開けて、目の前に薄茶色の木目の床が映った。
ゆっくりと体を起こして、周りをきょろきょろと見回した。
「目が…見える。」
目の前で手を握ったり開いたりする。
「戻った!!」
立ち上がって制服のスカートをぱしぱしとはたくと、先生の腕の中の子猫を見つめた。
すやすやと眠っている。
「よかったぁ、助かったんだ。」
私は呟いた。
「よくはない!」
海が言った。
「そうよ!心配したのよ!!」
そして、アリス。
「ほんとうに…このまま戻らなかったら、ご両親になんて説明すれば…」
先生は盛大な溜息をついた。
「えっと…」
私は申し訳なくて、俯いた。
でも、この子猫を助けないといけないと、その時はそれだけしか考えられなかったのだ。
「顔をあげなさい、メイさん。」
先生が目の前に立っている。
「はい…」
もう、項垂れるしかないのだが、そう言われてしまえば、顔を上げるしかない。
「どうやら、あなたは強くイメージすることによって魔法を発動してしまうようですね。」
「?」
よくはわからないけれど、それって何かを考えてそうしたいと思うと勝手に魔法を使ってしまうということだろうか。
「時空魔法が発動したようです。」
「…はい、あと5分、早く気がつけばって思いました。あと、この手が届けばって…」
「イメージで魔法を発動してしまうと、時として、魔法の暴走を起こしてしまうことがあります。今回は子猫とあなたの間のことだけで済みましたが、魔力レベル次第で、広い範囲を巻き込んでしまうことも考えられます。今後、安易に魔法を発動しないために、かなりの修練が必要となりますね。」
「はい。」
「ですが…今回はやむを得ない事情となりそうです。」
先生はそう言って子猫を私に差し出した。
「この子はおそらくあなたのための猫でしょう。」
「それって…」
「メイの使い魔ってことですか?」
アリスと海が顔を見合わせたが、私だってぽかんと口を開けて、先生の腕に抱かれている子猫を見つめた。
「そうなりますね。少なくとも、私には微力ながら魔力が感じられます。」
私は子猫を胸に抱きしめた。
「名前を付けて、大切に育ててあげなさい。いつか、メイさんの助けになるはずです。」
私は大きく頷くと、子猫の背を撫でた。
『大魔法使いセドリック』の孫として、私のもとにやってきた使い魔の子猫の主として、私は真面目に学ばなければ―と思った。
思ったんだけど、現実はー
「…追試は免れたけど…全部、ぎりぎり…」
テストの結果を握り締めて、肩を落として溜息をつくのだった。
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