死神の憂鬱

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 だが、死神の恰好をして近づいたら怖がられてしまう。何時も死神の服を着ているわけではないのだが念には念をいれて俺は医者の白衣を着て長い髪をハサミで切った。今までは肩まである髪を後ろで結わえていたのだ。そして茶色く組織の薄い瞳を誤魔化すため黒縁眼鏡をかけた。哲也くんは白衣の俺を見ると目を輝かせた。入院していて暇なのだろう。それともいい報告を持って来たと思ているのか。俺はニッコリ笑った。 「哲也くん、調子はどうだ?」  哲也くんは酸素マスクをしているが話は出来る。俺は目を細めて顔を傾けながら近づけた。 「暇で暇でしょうがないよ。僕、本当に病気なの?」 「心臓っていうところが悪いんだよ。左の胸がドキドキしてるの分かるだろ。それが心臓だ」 「うん、これが止まると死んじゃうんでしょ」  俺は眉間に皺を寄せる。 「哲也くん、死が怖いかい?」 「ううん、だって天国には死んだジョセフがいるんだもん、あ、ジョセフっていうのは犬。真っ白い大きな犬だったんだよ」  哲也くんは枕を背中につけてベッドの背を起こす。手元のリモコンは使いなれてるようだ。 「ジョセフに会えるなら死んでもいいか?」 「今すぐは嫌だよ。せめてお爺さんになるまでは生きたい。先生は医者でしょう。僕の病気治るよね」 「ああ」  俺は返事をしてしまってから苦しくなる。
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