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「起きる時間だぞ。」
彼の声に、私は「……ひゃーい。」と答えて、いつものようにズルズルと夢の沼に再び引きずり込まれる。
あと5分だけ……。
この時間が一番幸せ。
ふわふわした意識の中で、やっぱりふわふわした夢を見るんだ。
この前は雲の中にいる夢だった。
その前は彼と手を繋いで歩いている夢だった。
ふわっふわのパンケーキを食べてる夢もあったなぁ……。
…………ん?
もやがかかるような風景の中、私は身動きが取れない。
え? 何? 怖い!
抵抗しようとした瞬間、今度は息が苦しくなる。
溺れてるみたいな……。
やだ、やだ!
お、起きる!
これ、夢の中だし!!
パッと目を開けると、ドアップの彼の顔。
彼は目を開くと、私の唇を解放し、ニヤッと笑った。
「とろんとした目して、朝からかーわいい。」
ぎゅっと抱きしめられていたらしい体も解放される。
彼は私のベッドからスルッと抜け出すと、呆然と見つめる私の唇に、わざとらしくチュッと大きな音を出して、短くキスをした。
「朝ごはんできてるぞ。
……もっとも俺は、今、ごちそうさまって気分だけどな。」
わしゃわしゃと私の頭を撫でて、機嫌良さそうな顔をした彼は、部屋を出ていく。
私は顔に熱が集まってくるのを感じながら、布団に潜り込む。
何? 何?
今日は目覚めてからの方が、ふわふわしてるんだけど!
もう!
…………………大好き。
fin
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