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突然窓の外がピカッと光り、寝転んでネット小説を読んでいた真由美はビクッと体を震わせた。動きを止めたまま頭の中で数を数えると、8で雷鳴が天に轟いた。
体を起こし、真由美はスマホをベッドの上に無造作に投げた。トップに映し出されたネット小説には、今しがた押した“いいね”のフォントが左右に揺れている。
小説は雨の降る夜に次々と仲間たちが襲われていくホラー小説で、今真由美が一番更新を楽しみにしている作品だった。丁度メンバーが仲間の死を発見した場面で雷が光ったので、いつも以上に恐怖を味わってしまった。
「タイミング良すぎ」
カーテンの隙間から外を覗くと、真っ黒な雲が空を覆っている。
スマホがピコンと立て続けに鳴り出した。高校の友人達がメールアプリでお喋りを始めたようだ。
ーー初めて事故みた
ーーどこで?ヤバいやん
ーー七曲町の所。すんごいやつ
ーーひゃーっ怖っ
七曲町は真由美の家から近い。不謹慎にも、メールは動画が添付されていた。友人の“やばい”の声と、ガードレールにぶつかった白い車が画面いっぱいに映されている。激しく揺れるのは友人が興奮状態だったからなのか。車の下敷きになる形で、真っ白な腕が映っていた。その奥の大きな黒い影は、きっと頭。ジワジワとアスファルトに染みてきた赤黒い液体を見てしまった所で、動画は止まった。
あまりにも現実とかけ離れていて、作り物の映像のようにも見える。
真由美も“手、きもちわる”とコメントを入れた。
ーー手、きもちわる
ーー警察来たー血がすごい
ーーヤバい気持ち悪くなってきた
ほんの15秒程の映像に、真由美はゴクリと生唾を飲んだ。部屋の温度が急に下がった気がして、鳥肌の立つ腕を摩ってみる。今まで気にしなかったのに、家に一人で居るのが心細くなってきた。
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