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「……ね、ねぇ、あのねママ、いつ帰ってくる?」
『あと五分くらいで家に着くわよ。なあに、何かあった?』
真由美の子供の様な口ぶりがおかしいのか、ノイズの向こうで母親が含み笑いをした。
「いま事故動画を観てさ。多分ママの今いる所の事故現場だよ。そこにうちの制服の子いない?」
『い…………ね。なん……ない。みたの?』
声がぶつぶつと切れて届く。無料通話のアプリでよくある事だと、真由美はいつものように電波の入りやすい玄関へ移動した。
「ごめん、いま音が途切れた。見たよ。グロくて怖かった。無事だったのかな」
『たくさん人がいるわよ』
「……ママ、今なんて言ったの?」
ノイズが払きれず、雑音と母親の声が混ざり合う。しかしそれ以外に、母親に被さるような別の声がした。
「ママ、ひとり?」
『いたい、たすけて』
今度は母親の声よりも、別の声がはっきりと聞こえた。それも真由美の耳元で。
「きゃああ!」
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