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あと5分 : ハッピーエンド編
「あ...バス....来ちゃった....」
タイミングを見計らったかのようにバスが来た。
彼は、膝に置いていた荷物に手をかけ、
色あせたベンチから腰を上げた。
そこから5歩、リズムよく歩いて、
彼は振り返り、いつものように
「また明日」
そう言い左手を振った。
「あ....待、って...」
「どうした?」
【今言わないと後悔する。】
自分にそう言い言い聞かせ、
ゴクンと唾を飲み込む。
「ずっと...ずっと、お前のことっ...」
「お客さん、早く乗ってください。」
「あ...すみません
ごめん、明日でいい?」
「あ...うん、ごめん、またね...」
軽く手を挙げ、
バスに乗り込む彼の背中を見送った。
バスが視界から消えるまで
ただただ続く1本道を見つめていた。
結局、運転手に阻まれ言えなかった。
【明日....明日こそは言おう...】
そう思い、ようやく立ち上がる。
そして、元来た道を戻り、家へと足を急ぐ。
【明日こそは....】と決意を固めながら。
しかし
伝えるべき言葉を言えないまま、
ついに卒業して彼とは疎遠になった。
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