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首を傾け、顔をより近づける。
彼は何をするか察したのか、
目をつぶり、キュッと唇を結んだ。
あと、3センチ....
心臓の音がうるさい。
あと、2センチ....
彼の熱まで伝わって来そうだ。
あと、1....
「ごめん」
無意識に
行き場を無くしていた片手を
彼の口へ持ってた。
「えっ.....?」
戸惑い、揺らぐ彼の瞳を真っ直ぐ見れずに、
「そういうのは....本当に好きな人として....」
そう言った。
距離をとり、
絡めていた指を離す。
そして無造作に置いていた荷物を手に取る。
「帰ろう」
何もなかったかのように、
振り向きながら言った。
「っ....」
彼が泣きそうな顔をした。
「なんで....僕は....君に、いや...君が!!」
《下校の時間となりました。
本校舎に残っている生徒は出てください。
日直の先生が見回りを開始します。
繰り返します。
下校のー..》
タイミングよく、放送があった。
彼の言葉は、かき消された。
泣きそうな顔は変わらないまま、
彼は「....うん」とうなだれるように言った。
「先に行ってて。
すぐ追いつくから」
彼はそう言って、
帰り支度をした。
「わかった」
できる限り、明るい声でそう言い、
教室を出た。
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