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『綾乃も良い加減蹴り付けなさいよ』なんて言う友人もいる。
惚けてみたものの、多分彼女にはバレている。だけど、わたしはこの気持ちを伝えるつもりはない。だって考えてみて欲しい。
この会社に入社するきっかけはビー太郎だった。今の上司もビー太郎だ。9年間近く一緒にいて恙無くやってきた。仲間であり、気のおけない友人であり、一番居心地の良い距離だ。
今、踏み込んでその関係を壊したくなかった。仕事がやり辛いことこの上ない。わたしは転職するつもりはないし、できればもうずっとこの会社に居たいのだ。35を過ぎて転職なんて茨の道だ。昨今女性管理職も増えてきたとはいえど、やはり理解してくれる会社に出逢えるかどうかは分からない。
九条くんはその辺理解のある人だった。社員の声を聞いて環境を良くしようと努めてくれる人だ。広見さんが時短勤務の相談をした時もアッサリ承諾したし、在宅や育休を取ったりする社員も増えた。
やってみて駄目だったら考えればいい。
九条くんはいつも言う。本当に有難いと思う。同い年なのにこういうところは凄く尊敬する。
それを考えるとやっぱりここを辞めたいとは思えなかった。良い会社になったし、していったのは私たちだけど、きっかけをくれたビー太郎には凄く感謝している。
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