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ビー太郎は当時、他にも何人か声をかけたみたいだけど、やっぱりスタートアップ企業って敬遠されるようだった。
給料の未払いとか、寝る間もない程の残業とか。経験の無いこともやらないといけなかったりする。だけど会社が存続するかは分からない。一種の賭けのようなものだ。それを楽しめるかどうか性格の問題がある。
当然、この9年間良い事ばかりではなかった。苦しい時もあった。それでもここまできたのだ。つまり何を言いたいかというと。
ビー太郎と会社を天秤にかけた結果、会社が勝った。ADF+に居ればこの先ずっと、わたしの将来はよほどの事がない限り安泰だと思っている。
「ぁああ゛ーーーー」
プシューといい音がする。
帰宅して即行で冷蔵庫を開けた。ビールのプルタブを開け勢い良く喉に流し込んだ。
本当は一緒に乾杯する相手が欲しい。今日もおつかれって言い合える相手が欲しい。その相手はビー太郎だったらいいけど0.00000001%も希望がない。ビー太郎じゃない。女として意識もしてもらえないのに今更踏み込むなんて無謀だ。踏み込んだところでギクシャクしたくない。この年で恋愛のゴタゴタで仕事に支障を来たすなんて絶対嫌だ。
それに、この年になって我儘は言ってられないのも分かってる。自分に女としての市場価値がそれほど高くないことも十分理解している。子どもを産むにもリミットがある。わたしはそれほど強い気持ちはないけど、やっぱり、同じ条件なら若い子の方がリスクも少ないからそちらを選ぶだろう。ある程度妥協も必要になる。
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