35歳になりました。

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千佳子の言葉に耳が痛い。待ってても駄目だと分かってはいるものの、どうもそこまで意識が向かないのだ。 「綾乃も本当良い加減にしなよね」 千佳子にはビー太郎のことを話していた。と言うのも、ビー太郎に誘われた時、千佳子には相談していたからだ。 スタートアップ企業なんて止めた方がいいよ。 当時千佳子にも言われた。 会社自体どうなるか分からないし、給料だって満足に貰えないかもしれない。いいの?と。特に友人となれば少し甘くなるかもしれない。下手するとお給料が貰えないまま倒産してしまい、それを友人関係だからおおめに見てくれ、なんて言われるかもしれない、と。 新卒で入社した会社はメーカーの営業事務だった。良くも悪くもない。それがわたしの感想だった。 このままここで可もなく不可もない仕事をして、良い人見つけて結婚して仕事辞めて、子ども産んで、パートかバイトで復帰して?それとも専業主婦? なんてザックリとした未来を描いていた。それが楽しいのか楽しくないのかも分からなかった。入社して3年が過ぎ、同期でちらほら転職活動をする人もいたし、退職する人もいた。 大変そうだな、という感想とどこか他人事のように思っていた。だからビー太郎から話が来た時は驚いた。 『友人が会社を立ち上げたんだ。まだ半年ほどなんだけど、人手が欲しくて。結城、うち来ない?』
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