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ビー太郎の誘いに迷いも躊躇いもなく即答で承諾した。誘った本人が一番びっくりしていた。目を丸くして驚いて「え?本当に?!」なんて聞き返してきた。自分の現状を伝え、きっとできないことの方が多く、役にたたないかもしれないことも一緒にカミングアウトした。
それでも、その話を聞いた上でビー太郎はすぐにわたしを九条くんと香月くんに会わせてくれた。
休日のカフェに現れた彼らは3人ともとても目立ってた。わたしなんか一緒に居てすみません、って凄く居た堪れなかった。それだけはすっごく、すっっっごく覚えている。
香月くんはニット帽にパーカー、デニムと全身黒尽くめだったせいか、友達にはなりたくないタイプだな、と思った。でも、挨拶した瞬間、「女の子イェー!!マジで!?入ってくれンの?!」って言われた。「コイツ大丈夫か?」と思った。すんごい綺麗な顔してるのに、喋ったらめちゃめちゃ残念でちょっとツボだった。後からすんごいお坊ちゃまだと知ってかなりビビった。チャラそうに見えて意外と真面目で世話焼きなお坊ちゃまだ。
九条くんはデニムonデニムで全身青かった。一歩間違えればすんごくダサい人なのに、スタイルのせいか、着こなしが上手なのか、ただ、ただ似合ってた。だけど、発するオーラは、怖くて近寄りがたい。そして色気がめちゃくちゃすごくて同い年には全然見えなかった。
そんな九条くんだけど、営業職なのに人見知りするらしくそれを聞いてちょっと笑った。「営業なのに人見知りかよ」って思わず突っ込んでしまった。見た目が良くて社長という肩書を持ってて、一見完璧に見えるけど虫食いの穴だらけだった。
始めこそ警戒されていたけど、思わず初見で突っ込んでしまったことが功を奏したのか、わたしが九条くんに擦り寄るその辺の女子と違うことを理解してくれたのか、態度を軟化してくれた。仕事にまつわることは九条くんが一通りざっと説明してくれて、わたしの意志が変わらないようなら、と、そのまま会社に案内された。
当時は郊外のファミリーマンションの一室がオフィスだった。3LDKの間取りのリビングがオフィス、残りの部屋は九条くんと香月くんとビー太郎の私室だった。全然オフィスらしさはなかったけど、新しい仲間に自分の居場所を作ってもらえた嬉しさと、新しい職場にその時は胸がいっぱいだった。
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