35歳になりました。

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千佳子の答えに「考えとく」と言えば千佳は半ば諦めたようだった。わたしの考えとく、は実質体のいい断り文句だ。十年以上の付き合いになる千佳なら分かっているはず。 この日はそれ以降、婚活の話は出てこなかった。 「あやちゃん、ななね、カレシできたの」 その週末実家に帰った時だった。実家は神奈川の田舎で都内からだと電車で1時間半ぐらい。長兄は実家の近くに家を建てており、市役所勤めをしている。その娘の菜々が嬉しそうに報告してくれた。 「そうなの?どんな子?」 結城菜々、11才。 年齢の割にすごくませている。 いや、今時の子どもならこの年齢でも付き合ったりするらしい。長兄の奥さん、茉由さんが苦笑しながら教えてくれた。 「えっとね、足が早くて、サッカーが上手なの。頭もいいよ!」 いっつも算数のテスト、100点なの。と菜々はうっとりとした顔で彼氏のことを話してくれた。 「あやちゃんは?あやちゃんの彼氏早く会いたい」 菜々は何故かわたしの彼氏が凄く気になるらしい。ここ最近ずっと居ないし家族にはいないって言ってるのに菜々はなぜかずっと「いる」体で話す。 「綾乃もいい加減早よ嫁に行ってほしいわね」 「まあいいじゃないか」 そこに口を挟む母と父。もちろん母が早く嫁に行けといい、父はそれを拒む。 「ひとりぐらい、養っていける」 なぜそこで養う前提なのか。 それは分からないけど父は35を過ぎた娘をこのまま囲う気満々らしい。 母は時々お見合い的な話を持ってくるが、どれも地元の人間で、友人の友人だったり、友人の元カレだったり、凄く狭い繋がりだ。ついでにバツイチとかも普通にある。父は絶対頷かないだろう物件だ。
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