拗らせ恋の紡ぎ方

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 というわけで玲ちゃんから聞いたことを実践してみた。初めはうまくいったわ。というか、ほぼ半分寝ていたから目を閉じたら寝てしまったのよね。いつもなら頑張って目を開けようとするんだけど、力尽きた、みたいな感じになった。  ビー太郎にも朝謝れば「大丈夫」って許してもらえたわ。でも、あまり使うと効力がなくなるからね。ちゃんと使うところを考えて使うわよ。 「綾乃。起きてるでしょ。バレてるから」 はて。いったいどういうことかしら。 まだ二回目よ。そんなにすぐバレちゃう? 「狸寝入り、バレてるって。口と鼻塞ぐよ」 ビー太郎は言ってすぐに鼻と口を塞いだ。口はキスだけど、鼻は手だ。もちろん苦しくて目を開けた。 「ひどい!」 「酷いのはどっちだよ」 ビー太郎、お怒りモード。裸で怒るってちょっとシュールだけど、ここは潔く謝るべきね。 「ごめんなさい。でも、もう疲れたの」 わたしだけが悪いんじゃないわ。 一度に三回はだめ!歳を考えてほしい!! 「せめて二回。それ以上はもう無理」 「……わかった」 ビー太郎が渋々了承してくれた。ホッとしたら「じゃあ、今日は終わり?」とそれでも諦めずおねだりしてくる。 ……う、その顔、反則よ。 「ぎゅうってしたげるから許して」 ちょっと玲ちゃんパワーを頂くわ。 ビー太郎は一瞬目を丸くしたものの、素直にわたしに抱きついてきた。仕方ない、と言ってるらしい。 「そんな小賢しいことしなくていいから。ちゃんと言って」 下から見上げてきた彼は少し不服そうだ。俯けば待っていたように唇が触れる。 「……言っても聞かなかったじゃない」 「……綾乃もなんだかんだ言って楽しんでるのかと思ったんだよ」 リアルに通じてなかったのね。 「……楽しいけど、無理よ。限度があるのよ」 「それを超えたとき」 「超える必要ないわ」 そんなよく分からない挑戦なんて要らないわよ。いったい何を目指してるのよ、本当。
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