拗らせ恋の紡ぎ方

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ねぇ、結城さん。って。 マイクで言うことじゃないでしょーが! こっちは今日の発表会の為に資料作りから始まって会場設営、表彰準備諸々で動き回ってるっていうのに! わたしは笑みを張り付けて、会場の隅でにこりと笑い立つ。このやろ、このやろ!って思っていたら、ビー太郎の全然笑えない目に怒られた気がした。 「俺のお嫁さんになるんじゃないの?」 ちょーーーーーっと!! なんてこと言うのよ! こんな場所で!! はずかしいじゃないのっっ 「自分で言ったじゃん。『お嫁さんにしてくれる?』って。俺『いいよ。おいで』って言ったよね」 言ってねーーーーし!! (いや。似たような意味のことは言ったけど) 「フーン。結城ちゃん、嫁に行く宣言したのに、まだ届けは書いてくれないンだ。そんで、雅待ちぼうけカ」 「そうだよ。半年待ってんのに書いてくれない。ねぇ、俺のお嫁さんになるの?ならないの?」 え。今ここで? 言うの?嘘でしょ?! もちろん、お嫁さんになるけれども!! ビー太郎がガッチガチに周りを固めたせいで、周囲からの期待の目がヤバすぎて隠れたい。 穴があったら隠れたいっどころじゃないわ。 逃げたい、というか、消えたいわよ。 「綾乃」 ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ しーん、と怖いほどの静けさが周囲を包んだ。こんなところでこんな状況で返事をしないといけないなんて、公開処刑にも程がある。
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