拗らせ恋の紡ぎ方

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それから三ヶ月後の秋晴れの良き日。 わたし達は人生で一度の晴れ舞台を迎えていた。 あの夏の日のことを少しだけ懐かしく思いながら、目の前の重厚な扉を見据える。 きっと今頃、扉の向こう側にいる人達はあの日の映像を見て楽しんでいるのだろう。 社員の何名かが、善意で編集して面白可笑しくしたものだ。先日見せてもらって当事者ながら笑ってしまった。 「緊張してる?」 隣に立つ王子様が顔を覗き込んできた。真っ白なタキシード姿にきっちりセットされた髪。その姿はもう、本物の王子様。 「…そうね。少しだけ」 「珍しい」 「雅は緊張しないの?」 これから始まる披露宴。 正直何が起こるのか分からないわ。 このご時世に参列者150人越えだもの。 2/3は社員だけどね。本当は身内だけでやるつもりだったけど許してくれなかったのよ、何故か。 パーティーだけで十分だったはずなのに。 「緊張?昨日の夜からしまくり」 「え?あれだけ寝てたのに?」 ビー太郎、普通に寝たよね? 「だってさ。やっと綾乃と結婚できるじゃん。嬉しくて眠れなかった」 ちょ、ちょちょちょちょっと!! そんな可愛いこと言わないでよ!! 「今だって緊張してるよ。綾乃、凄く綺麗だし。朝の式中も………情けないけど直視出来なかった」
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