拗らせ恋の紡ぎ方

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王子様が照れ臭そうに目元を赤らめた。目尻を下げて、その瞳に甘さと慈しみと愛情が溢れている。 「……長かったな。二十五年?」 ビー太郎がぼそり、と呟きながら人が少ないことをいいことに甘えるようにくっついてきた。 扉の前に立つスタッフは見て見ぬふりをしてくれているけど、生暖かい視線にくすぐったくなる。 お互い今年で三十七歳って大分いい歳なのに、こんな幼稚でいいのかしら。 「長いわね。四半世紀よ」 「まあ、これからはずっと一緒だし」 「……うん。そうね」 扉の向こうからワーッという歓声と拍手喝采のお祝いムードが漂ってきた。会場スタッフが「ご準備お願いします」と目で訴えてくる。 「雅、準備だって」 「うん」 「離れてよ」 はいはい、とビー太郎が呆れたよう離れていった。婚姻届を出して以降、彼は色んなことを自重しなくなった。こんな風に人前ですも普通に甘えてくるのだ。 もちろん、腹黒策士は健在だけど。 『新郎新婦様のご入場です』 扉の向こうから聴こえたアナウンスに小さく息を吐き出した。隣に立つビー太郎スッと居住まいを整えた気配がする。そのことにつられて背筋を伸ばして軽く深呼吸をする。 「綾乃」 静かに扉が開くと眩い光が入り込んだ。入場用のBGMがダイレクトに入ってくる。 ワーーーーーーーーーーーーーーッ そんな喧騒の中、彼の声に応えるように隣に立つ王子様を見上げた。 ナチュラルに落ちてきた唇をただ、普通に受け入れてしまったわたし。 この日一番の盛り上がりに会場が揺れた。
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