拗らせ恋の紡ぎ方

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ーーーお互い気持ちを隠しつづけていたわけですが、“傍にいることが苦しい、離れよう”と思ったことはありましたか? わたしもビー太郎も顔を見合わせて「ないね」と言い切ったあと、ビー太郎がそう言ったの。 会場はまた大盛り上がりよ。 わたしは火を吹きそうなほど恥ずかしかったのに、ビー太郎は恥ずかしさのカケラもなく涼しい顔だったわ。くそう。このやろ。むむむむ。 「でも、なかなかラインは越えられなかったけど」 「お互い臆病だったのよ」 じゃあ、どこで踏み込んだの?って話なんだけど。 「……素直が一番だね」 「とっても勇気がいるけどね」 「うん、怖い」 わたしの答えを遮るように、ビー太郎がキスをする。ちゅう、と唇に吸い付いてそろりと舌が入ってきた。 「……っ」 「……でも、こんなことできるなら、そのリスクを取るのも悪くないかな。今日、つけなくていい?」 ビー太郎がいつものパッケージに手を伸ばしたところでやめた。世間体には構わない。なんたって初夜なんだから。 「綾乃にそっくりの可愛い子がいいな」 「……雅って何気に子ども好きよね」 「子ども?好きだよ。姉ちゃんの子どもが生まれた時もちょっと感動したし」 ビー太郎の目が「もう黙って」と言う。今度はさっきとは全然違う。甘さ<エロさ増々よ。 いつもよりお互い興奮しているのは、今日というめでたい日のせいか。それとも、着けないせいかよく分からないけど、前戯もそこそこに重なり合った。 いつもよりダイレクトに感じる彼の熱。 挿ってきた彼の脈動が下腹部を通じて伝わってくる。 「……こんな幸せがあるなら拗らせてよかったわ」 「…っ、拗らせた分……感慨深いよね」 なぜだろう。 いつもする行為なのに。 ただ、遮るものがないだけで こんなにも彼の全てが愛おしくて仕方がなくて、涙が溢れそうになる。
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