Side「B」 CASEその1 ~最後に母親がしたかったこと~

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「はい。急いで家に戻ったのですが、誰もいませんでした。それきりです。もうあれから6年が経ちます」 「話してみて如何でしたか?」 「そうですね。やっとスッキリしました。これで整理するつもりです。ただ、出来ることなら最後にあの子をもう一度抱きしめて、ごめんねって謝りたかった。本当にごめんねって……」  溢れ出す涙を拭おうとしない。もう下は向かないつもりだったのに――。  でも、ママは前に進むね。ありがとう……  ふと後ろを振り返ると、凛子より少し上の、恐らく中学生くらいの男の子が並んでいた。  少年も話したいことがあるのだろう。 「長い話に付き合ってもらって有難うございました」  母親は受話器を置いて電話ボックスを後にした。
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