Side「B」 CASEその2 ~野球少年が聞きたかったこと~

2/6
前へ
/177ページ
次へ
「どうでしたか?」 「嬉しかった。翔太とはすごく気が合った。あいつは親の都合か何かで、長い間学校を休むこともあったけど、いつも一緒だった」 「野球のほうはどうでした?」 「勿論、俺ほどではなかったけど、なかなかセンスはあった」  彼は得意げに言う。そして続けた。  ――「俺が色々と教えたことを上手く吸収していくのだ。特にピッチャーにとって一番大事な心構えと、アウトコースのストレートについては、口が酸っぱくなるほど言ってやった。元々、体力が無かった翔太は辛そうだったけど、それでも必死でくらいついてきた。本当に努力していた。俺がそのことを一番よく知っている。あいつとなら甲子園に行ける、本気でそう思った……」 「――それで?」 「なのに昨日の地区大会の決勝戦にあいつは来なかった。中学で目立って、揃って地元の強豪校にでもスカウトされようって話していたのに……ボロ負けだった。あいつの穴なんか埋められるはずがない」  少年は受話器を強く握りしめていた。 「あなたは何故、来なかったのだと思いますか?」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加