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「どうでしたか?」
「嬉しかった。翔太とはすごく気が合った。あいつは親の都合か何かで、長い間学校を休むこともあったけど、いつも一緒だった」
「野球のほうはどうでした?」
「勿論、俺ほどではなかったけど、なかなかセンスはあった」
彼は得意げに言う。そして続けた。
――「俺が色々と教えたことを上手く吸収していくのだ。特にピッチャーにとって一番大事な心構えと、アウトコースのストレートについては、口が酸っぱくなるほど言ってやった。元々、体力が無かった翔太は辛そうだったけど、それでも必死でくらいついてきた。本当に努力していた。俺がそのことを一番よく知っている。あいつとなら甲子園に行ける、本気でそう思った……」
「――それで?」
「なのに昨日の地区大会の決勝戦にあいつは来なかった。中学で目立って、揃って地元の強豪校にでもスカウトされようって話していたのに……ボロ負けだった。あいつの穴なんか埋められるはずがない」
少年は受話器を強く握りしめていた。
「あなたは何故、来なかったのだと思いますか?」
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