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「決勝の前日に俺たちは初めて喧嘩したのだ。あいつ怖いって……なぁ打たれることがかって、俺が聞くと、違うって言うのだ。多分、自分が打たれることで、俺の評価が下がって強豪校からの誘いが断られる、そんな翔太の考えだったように思う。決勝には俺を見に高校のスカウトが来ると知っていたから……あいつは優しい。本来はピッチャー向きの性格ではないのだ。確かに相手は強かった。練習試合でも勝ったことがないし、翔太もよく打たれていた。ただ俺はそんなことどうでもよかった。ダメならお前と一緒に違う高校に行って、甲子園をめざそう。そう翔太に言ったのだ。すると……」
あまり言いたくなさそうなのが見て取れた。合いの手でも入れてみよう。
「――それで?」
「翔太が今までに見せたことの無いような顔をして、自分なんかがお前の人生に責任は持てないって、涙を流しながら言うのだ。俺は初めてあいつが泣いているのを見た気がした。俺はお前と一緒じゃないと意味がない。そう言った。でもあいつは……」
「ショックだったのですね。彼に重いって言われたことが」
「あいつはそう言って一人で帰って行った。……でも、俺は信じていた。俺たちがこんなところで終わるわけがない。俺が口をすっぱくして言ったことを翔太は忘れるはずがない」
「あなたは何て言っていたのですか?」
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