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あれは凛子が四歳の誕生日を迎えて少し経った頃だったように思う。
酷く寒かった三月の始め。
看護師をしている私は遅くなった帰宅に焦っていた。薄く積もった季節外れの雪に足を取られつつも家路を急いだ。
今日いちの星座って、双子座ではなかったっけ……パンプスを履いてきたのが、そのまま朝の情報番組への恨み節に変わっていく。
さあ、もう少しだ。自販機の先にある街灯を曲れば築20年になるアパートが見えてくる。
私は気合を入れ直して足を進めた。
吹き曝しの階段を上がりながら組んでいた腕を解いて、鞄から鍵を取り出した。
「――ごめん。遅くなって」
ドアを開けながら声を掛ける。
いつもならバタバタと足音を立てて凛子が迎えてくれるのに、今日はリビングにあるテレビの声だけが聞こえてくる。
「ただいま」
――片開きのドアを開けると、テレビの前では隆弘が、……あっ、元の旦那ね。彼が横になって鼾をかいて眠っていた。テーブルの上には500mlの缶チューハイが三本程、無造作に倒れている。
凄く嫌な予感がしたわ。だって私の足元に転がるプリキュアの玩具が壊れていたから。
私は引達戸をスライドして寝室とした6畳程の部屋へと入っていった。
暗がりの中、そこには敷きっ放しの布団の上で膝を立てて座っている凛子がいた。
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