133人が本棚に入れています
本棚に追加
「――ねぇ凛子、どうしたの? 調子悪い?」
彼女は口を閉ざしたままで暫く私に視線を留めている。唇をギュッと噛んでいたのだろう変色しているようだ。
ようやく私に気付いた小さな瞳は揺れながら崩壊していく。
娘から聞いたのは隆弘に酷く頭を叩かれたという事実だった。
直ぐに隆弘を起こして問い質すと、まるで知らない顔をして、激しい口論の末に、突き飛ばされ背中を数回踏みつけられた。
初めて受けた暴力に随分と戸惑っていると、彼は物にもあたったし、部屋も滅茶苦茶にした。
何だろう、目の前で癇癪を起した子供を見るようだった。
それからは、たがが外れたように、私や娘に暴力を振るうようになっていく。特に酷かったのは、どちらかが見ているときだった。
「何故、直ぐに逃げなかったのですか?」
「逃げ出せないのよ。だって凛子には父親が必要でしょう。あと、隆弘……ホントは優しいの。私を殴った後、泣きながら私を抱きしめて許しを乞うの。ゴメン、お前しかいない、お前しかいないって……」
それでも突然に始まった彼のDVは日常的となっていく。まるで食事でもするかのように生活に存在していった。
それは約2年の間続いていく。
最初のコメントを投稿しよう!