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――先生は言ったわ。私を真直ぐに見ながら、「あのー、ご家庭は上手くいっていますか? 余計なお世話なのかもしれませんが、お母さんは大丈夫ですか?」
「何故そんなことを言うのですか?」
先生は迷っていた。言うべきか言わざるべきか葛藤しているようだった。
「実は凛子ちゃんの作文に、こんなことが書かれていまして……」
先生はプリントを見せてくれた。――そこには拙い文字で、こう書かれていた。
……凛子はパパからママを守るのだ。パパの攻撃が当たらないようにママをお膝に乗せてギュッとする。だから凛子は早く大きくなりたいの。
私はその場で泣き崩れていた。直ぐに凛子を連れて逃げようと思った。あの男のもとから。
「ほほ、それは良かったですね」
「――ううん。そうでもなかった。今思うと最悪の選択をしたのかも。だって、そうでしょう。ぶつけるところがないのよ。教えてよ。私たちは怒りの矛先を誰に向ければいいのよ? ねぇ、いったい誰の味方なの? 暗いところで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、そう何度も叫んだわ、もう今では声も出ないみたい」
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