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僕の恋人であった麦咲菊乃は、二十歳を迎えて間もなく、この世からいなくなった。
「──もし明日、地球が無くなることになったら、どうする?」
菊乃を失ってからというものの、ふと、幾度となく脳裏を過ぎる言葉だ。
あのとき彼女は、含蓄ある問いかけを僕にした。 気がする。 確証が無いから正しいことは言えないけれど、彼女の憂いた表情を思い出すに、決していい意味は込められていなかった。
そんな彼女の問いに、僕は何と答えただろう。
まさかあれが、僕たちにとって最後の会話になるなんて思いもしなかったから、普遍的なことを口にしていたような──そんな記憶がある。
一体、菊乃は僕に何を伝えたかったのか?
真意はあったのか、あるいは何気ない会話の一つだったのか、今となっては分からない。 全てが闇に葬り去られてしまい、答えを知る術が手元からこぼれ落ちてしまったのだから。
──ただ、と僕は己に言い聞かせる。
もはや分かろうとしなくてもいいのかもしれない。
どれだけ手を尽くそうと、全てが水泡に帰すことぐらい分かっている。
これ以上、無駄な足掻きを行う必要は無いのだ。
そもそも僕はもう彼女には会えない。
であるからして、答えのない問いには、蓋をしておくべきなのだ──。
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