76人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
海の神様と山の神様。
蒼真と共同生活をはじめて一週間とちょっとが過ぎた。
蒼真ははじめ私のことを『龍鴻様』と呼んでいた。
私に『様』なんて付ける必要、どこにもないのに・・・。
だから私は共同生活をはじめて2日目の夜、私のことは呼び捨てでいいと蒼真に告げた。
私にそんなことを言われた蒼真は困った顔をしていた。
蒼真は真面目だ。
だから私の提案に悩むであろうことはわかっていた。
それでも私は蒼真に名前で呼ばれたかった。
『様』なんて大層なものはなしで・・・。
~・~・~・~
「あ、龍鴻さん、おはようございます」
今日も変わらない朝の挨拶に口元が綻んだ。
「おはよう、蒼真。今朝も早いね」
私はそう言って朝食の支度をしている蒼真の後ろに行き、そのまま蒼真を抱きしめてふぅ~・・・と息を吐き出し、窓から入ってきた心地のいい風待月の薫風に目を細めていた。
最初のコメントを投稿しよう!