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朝吹いていた薫風は正午を前に青嵐に変わり、苛波を生んでいて私は何も考えずに海日を見つめていた。
そんなとき、ざぁ~・・・と、木々の匂いのする山の風が吹き、私の髪を荒らした。
しょうもない私を叱るように・・・。
『・・・久しぶりだね。元気にしていたかい?』
私は海日を見つめたまま私の後ろに居るその子・・・空と山の神・天樹神・狼鷲に訊ねた。
『お前に元気かどうかなんて聞かれたくない・・・。お前、わかってんのか? 自分がどんな状況なのか・・・』
狼鷲のその言葉には牙のようなトゲが含まれていた。
そして、そのトゲの中にある意味を私は理解していた。
空と山の神は優しい・・・と・・・。
『私はもうじき消えてしまう。だから会いに来たんだよ。彼に・・・』
私は笑み、あたたかい海日に手を伸ばした。
届くだろうか?
そんなことを思ったけれど、私の手はそれを掴むことができず、それどころか透けていた。
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