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『何か手立てはないのか?』
狼鷲のその問いに私は黙していた。
そんな私に狼鷲は『おいっ!』と短く吠え、呑気な私を困らした。
そして、風が・・・止んだ。
『・・・消えるのが私の運命なら私はそれを受け入れるしかない。それに・・・決められた運命なら足掻いたところで虚しいだけ・・・』
そう言って笑い、振り向いた瞬間に私の左頬には滲むような痛みが走った。
『足掻けよっ! 今さら『運命』なんて安い言葉で片付けんな!』
そう吠えた山犬の子の瞳は深緑の色をしており、その深緑の瞳は私に深く険しい山を思わせた。
その深く険しい山は人を拒み、人々に畏怖の念を与えるほどのもの・・・。
しかし、その山は今はもうなき山・・・。
人々は山を切り開き、そこに居住地を設けていった。
目先の利のことしか考えずに・・・。
『仕方のないことなんだよ・・・。私だけが特別なんじゃない。狼・・・君だってわかってるだろ? 君たちが特別なんだって・・・』
私の言葉に狼鷲は開きかけた口をつぐみ、俯いた。
グッと拳を握り、その拳を震わせて・・・。
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