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『・・・蒼真に会えた。それだけで私は満足だよ』
そう言った言葉が苦かった。
蒼真に『会えた』ことは嬉しい。
けれど、それだけじゃ足りない・・・。
『会えただけ』じゃ足りないんだ。
私は神なのに卑しい・・・。
だから消えてしまうのかも知れない・・・。
『・・・そうかよ。じゃあ、好きにしろよ。俺はもう知らない。お前のことなんか大っ嫌いだし・・・』
そんなことを狼鷲から告げられた私はクスリと笑ってしまっていた。
それに狼鷲は『おい』と怒った声を上げた。
可愛らしい小さな白い牙を誇らしげに覗かせて・・・。
『わざわざありがとう。私のことを嫌いだと教えてくれて。彼にも・・・よろしくね?』
私は狼鷲にそうお礼を言って翼を広げ、その広げた翼をゆっくり動かした。
ひゅー・・・と、風が吹いた。
それは潮の匂いのする風で幸せを運んでくる風だった。
夏が・・・はじまる。
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