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『・・・噂には聞いていたが・・・なぜここに「禍罪」が居るんだ?』
そう言葉を発したのはずっと黙していた狼鷲だった。
狼鷲のその言葉に俺は小さな溜め息を吐き出した。
狼鷲は正直者だから思ったことをそのまま口にしてしまう。
それが禁じられた言葉であっても・・・。
「私の手伝いをしてくれているんです」
笑んでそう答えた店主に狼鷲は『は?』と声を発し、怪訝げな表情をその可愛らしい顔に滲ませた。
確かに『は?』だ。
怪訝げな顔にもなる。
「弟子・・・とでも言いましょうか? 嗚呼・・・その前にまずは自己紹介ですね」
店主のその言葉に狼鷲はまた『は?』と声を発し『はい・・・』と返事を返した青年に深緑色の視線を向けていた。
青年は部屋の隅に立ち、何か欠けている黒い目で俺たちを見つめ、その何か欠けている黒い目に見つめられた俺は背筋に冷たいものを感じていた。
「・・・原田 大志と言います。よろしくお願いします」
そんななんでもない挨拶だった。
だけれど、その挨拶に俺と狼鷲は息を飲んでいた。
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