海の神様と山の神様。

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「すぐに部屋の準備をしますからお待ちください」 店主はそう言うとそそくさと店の奥へと姿を消していき、そこに残された俺は狼鷲(ろうしゅう)の頭を撫で続けていた。 なんとなく落ち着かなかった。 その落ち着かない原因が何かはわからない。 もし、何か原因があるとすればそれは聞こえるはずのない潮音(ちょうおん)が聞こえ続けているからだろう。 『神・・・様?』 そんな声が聞こえてきた。 それは幼く、愛らしい女児の声だった。 俺はゆっくりとその声の聞こえてきた方を振り返り、笑んだ。 「こんばんは。ちょっとだけ神様・・・かな? この子が・・・」 俺はそう答えて狼鷲(ろうしゅう)の頭をポンポンとし、その子を見つめ見た。 艶のいい黒髪は肩と大きな目の上で丁寧に切り揃えられ、赤い綺麗な着物を身に纏ったその子の回りは一際清んで見えた。 『お姉さん・・・じゃ・・・ない・・・の?』 その子のその言葉に俺はきょとんとさせられ吹き出した。 まさかそんなことを言われるとは思わなかった。 「お兄さん・・・かな? 僕、お姉さんに見えた?」 久しぶりに言われた。 俺はたまに女と間違われる。 その見た目が幸か不幸かで俺は今も生きている。
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