海の神様と山の神様。

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「キミは・・・小袖(こそで)ちゃんって言うの?」 俺はそう訊ね、俺のその問いにこくりと頷いたその子に『名前も可愛いね』とお世辞抜きの言葉を掛けて笑んでいた。 人の世界での俺は嘘だらけだ。 綺麗でもない令嬢に『綺麗ですね』と言葉を掛けて上辺だけの笑みを向けたり、素敵でもないものを『素敵です』と言って褒めたり・・・。 人の世界は疲れる。 そもそも俺は人が嫌いだから余計に・・・だ。 『ありがとう・・・ございます。・・・えへへへ。嬉しい・・・』 そう言って屈託なく笑んだ座敷童子のその子・・・小袖(こそで)に『どういたしまして』と言葉を返したところで『お待たせいたしました』と言って戻って来た店主に俺は『いえ』と言葉を返し、やけに間がいいと感じていた。 「お部屋の準備が出来ましたのでどうぞ奥の方へ」 店主のその誘導に俺はまだ寝ている狼鷲(ろうしゅう)を起こさないように抱き上げ、お姫様抱っこをして小袖(こそで)に会釈をし、店主のあとを追って店の奥へと進んで行った。
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