海の神様と山の神様。

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~・~・~・~ 「何か必要なものがあれば何なりとお申し付けください」 そう言って用意された部屋の襖をからりと開いた店主に俺は『はい』と返事を返し、広い部屋の中央にぴったりとくっ付けられて敷かれた二組の布団を目にして苦い笑みを滲ませてしまっていた。 「一組だけご用意するのもどうかと思いましたので一応二組ご用意いたしました。・・・一組にいたしましょうか?」 そう言ってクスクスと笑う店主に俺は『敵いませんね』と言葉を漏らし、笑ってしまっていた。 この店主には本当に敵わない・・・。 それは何人たりとも・・・。 何怪(なんかい)たりとも・・・。 そして、何神(なんじん)たりとも・・・。 「お心遣い痛み入ります。有り難く使わせていただきます」 俺はそう言って頭を下げた。 それは感謝の気持ちと降伏の意味も込めて・・・。 「遠慮は無用ですよ」 店主のその言葉に俺は食い付いた。 『遠慮は無用』。 ならば・・・。 「『神落ち』を救う方法を知りたいのでしょう?」 そう言って口元だけに笑みを浮かべた店主に俺は息を飲んでいた。 それはまるで首元に毒の塗られた鋭い刃を突き付けられたかのように・・・。
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