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「落ち掛けている神を作った者に落ち掛けている神のことを思い出してもらうのです」
それはつまり・・・。
「そんなこと・・・」
「出来ます」
俺の言葉を遮った店主は柔和ににこりと笑んでいた。
店主のその笑みは春の柔らかな陽光のようにあたたかく、俺に希望の光を与えてくれた。
よかった・・・。
これで海神を救える・・・。
そうすれば狼鷲が悲しむこともない。
「もちろん・・・」
店主のその言葉に俺の思考は止められ、春の柔らかな陽光のようにあたたかだった店主の笑みは掻き消え、その掻き消えた笑みの代わりに浮かんだのは夜桜のように妖しい笑みだった。
「容易ではないですけれど・・・ね?」
容易ではない・・・。
覚悟はしていたが改めてそう告げられると苦しいものがあった。
「普通の人間なら出来ないでしょう」
「それじゃあ・・・」
俺は眉間にシワを作り店主を睨め付けてしまっていた。
歯向かっても到底敵う相手ではない。
相手の店主からすれば俺を負かすことなど赤子の手を捻るよりも簡単なことのはずだ。
それでも俺はそんな態度を取ってしまっていた。
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