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「ええ、そうです。その十時 桜の元に『招き』の子が居ます。一度お会いになるのもいいかと思いますよ?」
店主のその言葉に俺は頷いて『はい』と答えてみたが乗り気ではなかった。
『招き』は幸も不幸も呼ぶ。
幸だけなら歓迎だ。
だが、不幸はどうだ?
もし、会っているときに予期しない不幸が『招き』に招かれてやって来たら・・・。
「十時 桜は雨月の子です。もし、林太さんや狼鷲が会っているときに何かあっても大抵のことは桜が対応します」
「大抵のことは・・・ですか・・・」
俺は溜め息を吐き出すようにその言葉を口にし、胸の内で『それでは困る』と一人ごちっていたがふとその思考は止められた。
今、店主は・・・なんと言った?
十時 桜は・・・誰の子だって?
「十時 桜は雨月の子・・・と、申し上げました」
俺の心を読んだ店主は可笑しそうにそう言って軽い息を吐き出した。
店主が吐き出したその息は穏やかな夜風のようだった。
「雨月の・・・子? 実子・・・ですか?」
俺の問いに店主は否と首を横に振った。
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