深夜零時の待ち合わせ

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深夜零時の待ち合わせ

夏が好きだった。蒸し暑い縁側、照りつける太陽、溶けかけのアイス、 セミの鳴く声、全部が心地よくって大好きだった。 夏がくるたびに、 何か新しい発見を求めて、未知の冒険が始まることを期待して、誰かが遠くに連れ出してもらうこと待っていた。 だが、今はどうだろう。大人になった俺は クーラーが効いた部屋の方が好きだし、日差しは目がチカチカする。 アイスは冷えていた方が好きだし、セミの鳴き声は鬱陶しくてしょうがない。 結局、新しい発見も冒険も、俺を連れ出してくれるヒーローも現れなかった。いつしか、子供っぽい好奇心も無くしてしまった。 季節が変わるたびにときめきを感じていたあの頃。 今では何も感じないのは悲しいだろうか? でも仕方がない、これが大人になるって事だろう。 二十五回目になる夏。 この夏もいつもと変わらないはずだった… ただ今、23時47分。25歳の俺は、洗濯が終わるのを待っている。 ここは二丁目のコインランドリー。5日前に自宅の洗濯機が壊れて以来ここに通っている。 職場は一駅先の花屋。仕事柄、朝は早く夜は遅いのでここにくる のは深夜になってしまう。洗濯が終わるのを待つのは退屈なので、タバコをふかしていたら少年が入ってきた。 サラサラの黒髪。華奢な体。背は俺より少し低いぐらい。顔立ちもはっきりし ていて、鼻筋がすっと通っている。瞳の色は、茶色というより琥珀色に近い。綺麗な色をしている。 もしかしたら、外国の血が流れているのかもしれない。 とにかく、日本人離れした整った外見をしていた。 芸能界だって夢じゃないだろう。 思わず引き付けられる魅力を持った美少年である。 彼とは初対面ではない。これで会うのは四回目だ。自慢すると、 彼と俺は歳の離れた「友人」である。その経緯は次のページから話すとして、今は彼についてだ。彼は見た目に比例して、否、見た目以上に中身もいい。ちょっとミステリアスに思われそうだが、話してみれば、年相応である。 何より、そこにいるだけで周りが浄化されるような神々しさ、 その上、人当たりも良い。綺麗でユーモアもある。成績もいいらしい。 天は二物も三物も彼に与えているようだ。 「こんばんわ。三木さん」 「よぉ。また会ったな、みゆ。今日も俺の話し相手になってくれない?」 タバコの火を消して、彼をこちらに手招きする。 時刻は深夜零時。洗濯はまだ終わらない。
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