7月は嫌い

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わたしが天国に行ってから、ママの心はぽっかり穴が空いたみたいになったかもしれないけれど、その穴は、きっと大事な穴だと思う。その穴は、ただの穴じゃないと思う。そこから大きな意味を見つけられるんじゃないのかな。 ママは、わたしの個性について、いっぱい勉強して、もっと多くの人に「自閉症」について分かってもらおうとか、差別や偏見をなくそうとして、講演したり、個人的に相談に乗ってあげたりしていたじゃない。一生懸命にね。お話を聞いた人の心は、すごく動いたと思う。響いたと思う。ママは「話すのは苦手、緊張する、うまく言葉が出ない」って、時々困惑していたけれど、回を重ねるごとに、上手になったし、ママ本来の雰囲気が出ていたし、ナイスだったよ。うわべだけじゃなくて、胸の奥に届く、そういうメッセージだったんじゃないかな。 ママは、日航機墜落や、震災の遺族の人を見舞ったりしていたよね。なかなかできないことだよ。この20年間で、本当に人の心に寄り添って、慰められる特別な力をつけたんだと思う。
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