熱き想い、全力で叫べ!

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熱き想い、全力で叫べ!

「行くぞ!第一問!問題。日本で最も大きい湖は琵琶湖ですが、では二……」 「同担だけは絶対拒否!同担だけは絶対拒否!」  隣の席から一足早く叫び声が響いてきた。このパターンの答えはほぼひとつに絞られる。 「赤岩ガーくん、永遠ラブ!赤岩ガーくん永遠ラブ!」  出遅れを巻き返すべく、私は懸命に叫び続ける。そして  ピーン!  と音が鳴った。解答権を示すランプが灯ったのは青山さんの席だった。 「桜山学園、青山さん!」 「霞ヶ浦!」  ピンポンピンポン!と正解音が鳴り響く。二ときた時点で日本で二番目に大きい湖を問う問題だということはわかっていたのに、取れる問題を落としてしまった。 「では問題!『男もすなる、日記といふものを、女もしてみむとて、するなり』という書き出しで始まる、き……」  今だ!! 「赤岩ガーくん、永遠ラブ!赤岩ガーくん、永遠ラブ!」  ピーン!という音と共に私の席の解答権ランプが光った。 「桔梗坂高校、丹治さん!」 「土佐日記!」  正解音と共に、私は1ポイントを手に入れた。10ポイントまでの道のりは長いが、1歩1歩進むしかない。 「英語で跳ね返りを意味する……」 「赤岩ガーくん、永遠ラブ!赤岩ガーくん、永遠ラブ!」 「桔梗坂高校、丹治さん!」 「リバウンド!」 「6面サイコロの目の数を全て足すと21、ではすべてか……」 「同担だけは絶対拒否!同担だけは絶対拒否!」 「桜山学園、青山さん!」 「720!」  私と青山さんは一進一退の攻防を続ける。中盤戦に差し掛かり得点は6対4で、私が2ポイントのビハインドを負っている。私は枯れそうな声を潤すべく手元にあるペットボトルの水で喉を潤した。背伸びをして空に咲く満開のひまわり達を撫でるような風が吹いてきて、私の額にしたたる汗を拭っていく。  増田さんが再び、出題者席に置いてある原稿に目を移した。 「問題。ケイ酸塩鉱物のグループに属する鉱物からなる宝石で、日本語では柘榴石……」  これは! 「赤岩ガーくん永遠ラブ!赤岩ガーくん永遠ラブ!」  私は枯れんばかりの声で叫び続ける。一目盛、二目盛と手前にあるメーターが上がっていく。しかし、青山さんのメーターも負けず劣らない勢いで目盛を伸ばしてきていた。 「同担だけは絶対拒否!同担だけは絶対拒否!」  鬼気迫る声が私の耳にも入ってくる。でも、私にだって譲れないものがある。この問題は、この問題だけは私が獲りたい! 「赤岩ガーくん永遠ラブ!赤岩ガーくん永遠ラブ!」 「同担だけは絶対拒否!同担だけは絶対拒否!」  絶叫のつばぜり合い。今までのどの問題よりも解答権が遠い。そして「ピーン!」という音が鳴った。  解答権を得たのは、青山さんだった。 「桜山学園、青山さん!」 「ガーネット!!」  私が天を仰いだ瞬間、無情にも正解音が流れてしまった。  1月の誕生石、ガーネット。  真実、友愛、貞節、忠実、勝利という宝石言葉を持つ美しい石、ガーネット。  賀練斗(ガーくん)の名前の由来となっている愛と信頼の石、ガーネット。  これを、この問題を獲られてしまった。   ーーこれ以上、いいようにさせてたまるか!!!  私の魂に完全に火がついた。  
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