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20年後
「乾杯!」
あの勝負から20年。苗字が丹治から山口に変わった私は、同じく青山から苗字が変わって竹中になったひかりと一緒にグラスを合わせた。今日は夏休みを利用してひかりの家に13歳の娘・かなでと共に遊びにきているのだ。太陽の台地で激しい火花を散らした私達。私は敗れたけれど、勝負が終わればノーサイド。しかも何の縁があったのか私たちはたまたま一緒の大学に進学し、無二の親友となったのだ。
かなでがスマートフォンの動画を眺めている中、私達は思い出話に花を咲かせる。
「ホント、あの夏も暑かったよね」
「うん。ひまわりも綺麗だったけど、熱い中喉がカラカラになったことの方がしっかり覚えてるよ」
私の話を受けてひかりもそう言って笑う。
「へぇ、クイズ好きなんだ。私も!」
リビングの向こうから声が聞こえてきた。
「るみなの家の子もクイズ好きなの?ウチのまみも好きなんだよね」
「うん、そうだよ。血は争えないのかな?」
私はそう答えながらつい笑ってしまった。うちのかなでがまみちゃんとクイズの舞台で争うこともあるのかな?などと考えると、つい楽しくなってしまう。
「お母さん、この勝負凄いよ!見て!」
「お母さん、一緒に見ようよ!」
かなでとまみちゃんの声が聞こえてきた。私はかなでのもとへと向かい、スマートフォンを覗き込む。そして動画を見たその瞬間、私は自分の顔から火が出そうになるのを感じた。
ーーうわぁ。
心の声を押し殺す私。
かなでのスマートフォンには
「同担だけは絶対拒否!同担だけは絶対拒否!」
と鬼気迫る表情で連呼するひかりの姿と
「赤岩ガーくん、永遠ラブ!赤岩ガーくん、永遠ラブ!」
と顔を真っ赤にして叫び続ける若き日の私の姿が映し出されていた。
【終】
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