1.俺は羊飼いを辞めるぞぉぉぉッ!

2/2
前へ
/43ページ
次へ
「別に」 「別にってことはないでしょうよ。命より大切な羊を売っちゃったんでしょ。もしかして、また妙な事に首を突っ込んだんじゃあないでしょうね? それとも本当に頭おかしくなっちゃったの?」 「ひ、ひどい言い草だな」 流石のメロスもタジタジである。 気の弱いばかりだと思っていた妹も、結婚すれば変わるらしい。 顔を顰めて水を注ぐ彼女を眺めながら、彼は小さくため息をついた。 「もう隠し事は無しよ」 「エヴァ、別に俺は隠し事なんて――」 「してたでしょうが」 「ゔっ」 痛いところをつかれたものだ。 しばらく視線をさ迷わせていたが、エヴァの『兄さん?』の一言に項垂れる。 そして注がれた水を一口だけ飲んで、話し始めた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加