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「別に」
「別にってことはないでしょうよ。命より大切な羊を売っちゃったんでしょ。もしかして、また妙な事に首を突っ込んだんじゃあないでしょうね? それとも本当に頭おかしくなっちゃったの?」
「ひ、ひどい言い草だな」
流石のメロスもタジタジである。
気の弱いばかりだと思っていた妹も、結婚すれば変わるらしい。
顔を顰めて水を注ぐ彼女を眺めながら、彼は小さくため息をついた。
「もう隠し事は無しよ」
「エヴァ、別に俺は隠し事なんて――」
「してたでしょうが」
「ゔっ」
痛いところをつかれたものだ。
しばらく視線をさ迷わせていたが、エヴァの『兄さん?』の一言に項垂れる。
そして注がれた水を一口だけ飲んで、話し始めた。
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