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「あのとき、なりゆきであんな大騒ぎになっちゃったけど、騒ぎのさなか、飛鳥を見つけたわ。 ふわふわの頭をした、やさしそうな瞳のあなたをみつけて、ああ、このコと友達になれたら、きっと幸せな少女時代を送れるなって思って‥‥‥。 つい、飛鳥の手をにぎったの」
飛鳥は、なんだかこそばゆい気持ちなって、熱くなった耳をさわった。
そして、言いかけた言葉をさえぎって、頭の中でつぶやいた。
「じゃあ、あのときのあの少女は、いったい‥‥‥ 誰?」
かのんは、あの市政まつりの日のことを思い出していた。
「わたしね、あの日は、お父さんとけんかしちゃったの。 ささいなことだったけど、家を飛び出しちゃって‥‥‥。 なぜだか駅に向かってみたの」
「そういえば、飛鳥は、あのジャケットを着ていたよね」
かのんはクローゼットのハンガーにかけられた、飛鳥のデニムのジャケットを羽織ると、ガールズコレクションのモデルのように、かわいらしくクルっと回ってみせた。 そのとき、ジャケットの左ポケットに重さを感じて、手を入れてみる。
「これなに?」
小さな手のひらに握られていたその石は、霞がつまったようなミルク色をしていた。 ちょうど大玉のビー玉くらいの大きさの、三角形を丸めたような四面体の中に、半煉り状の金色の雲母が生き物のようにぐにぐにと動いているのが見えている。
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