黄昏どきのユニコーン

39/112
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「あのとき、なりゆきであんな大騒ぎになっちゃったけど、騒ぎのさなか、飛鳥を見つけたわ。 ふわふわの頭をした、やさしそうな瞳のあなたをみつけて、ああ、このコと友達になれたら、きっと幸せな少女時代を送れるなって思って‥‥‥。 つい、飛鳥の手をにぎったの」    飛鳥は、なんだかこそばゆい気持ちなって、熱くなった耳をさわった。 そして、言いかけた言葉をさえぎって、頭の中でつぶやいた。 「じゃあ、あのときのあの少女は、いったい‥‥‥ 誰?」  かのんは、あの市政まつりの日のことを思い出していた。 「わたしね、あの日は、お父さんとけんかしちゃったの。 ささいなことだったけど、家を飛び出しちゃって‥‥‥。 なぜだか駅に向かってみたの」 「そういえば、飛鳥は、あのジャケットを着ていたよね」 かのんはクローゼットのハンガーにかけられた、飛鳥のデニムのジャケットを羽織ると、ガールズコレクションのモデルのように、かわいらしくクルっと回ってみせた。 そのとき、ジャケットの左ポケットに重さを感じて、手を入れてみる。 「これなに?」 小さな手のひらに握られていたその石は、(かすみ)がつまったようなミルク色をしていた。 ちょうど大玉のビー玉くらいの大きさの、三角形を丸めたような四面体の中に、半煉り状の金色の雲母(うんも)が生き物のようにぐにぐにと動いているのが見えている。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!