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 初めて彗星(すいせい)を発見した者は、自分の名が星の名前になるらしい。  俺はそんな話を聞いてから、度々夜空を見上げるようになった。日本では「ほうき星」とも呼ばれるその星は、当然ながら願っていれば現れるものではない。  (ちな)みに、初めて小惑星を見つけた者は命名権が与えられるらしい。つまりは、その星の名付け親になれるらしい。  一番最初に見つければ、好きな名前が付けられる。それを世界中の人が見てくれる。  俺は頭の中や日常の中を探し回って物語りを見つけては、それに名前を付けている。つまりは、タイトルだ。  しかし俺の作品は光るどころか、誰の目にも触れていない。だが俺は、それでもいいと自分に言い聞かす。  星との違いは消滅しないことだ。物語りは永遠に残ると信じている。 「さぁ、今日は何を書こうかな」    ほうき星や惑星は、今宵も見えそうにない。  夜空の星探しを諦めた俺は、気を取り直していつもの小説サイトに目をやった。 ……あれ?  今まで使ったことのない通知欄に、赤いマークが付いている。「これは……」俺は胸の高鳴りを抑えて静かにそれを押した。 ──星が届いている。  ようやく俺の名付けた物語に、誰かが気づいてくれたんだ。  俺はやっと見つけた。箒星が一つ、俺の心に飛び込んだ。
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