約束の海と新しい出会い

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約束の海と新しい出会い

 7月の下旬小川動物トレーナーでのバイト  「うわぁ、暑い。」私は車を出て、事務所に向かう。    「おはようございます」っとドアを開けて言うと、  「美穂さん、おはようございます。今日も暑いですね。」っと事務所に居た小川さんが言う。  「本当に暑いです、このまま海に行きたい気分ですよ。」っとタイムカードを押しながら言う。  「本当ですね、美穂さんが海に行く時は、是非私も一緒に。」っとニコニコしながら言う小川さんに、  「何を期待してるんですか?小川さんは。」っと聞くと、  「それは、もちろん美穂さんの水着姿ですよ。」っと恥ずかしげも無く言う小川さんに   (相変わらずストレートな人だな)っと呆れながら思ってると、  「美穂ちゃん、おはよう。」っと陽子さんが入って来た。    「おはようございます。陽子さん」っと返す。  「いやぁ、事務所は涼しくて良いね、小川さん」っと陽子さんは、嫌みっぽく言う。    「私は、涼んでる訳では無くちゃんと仕事してるんですけど、松河さん。」っと返す。  「あっ、そうなのね、それで美穂ちゃん頼みたい事があるから、お昼配り終わったら声掛けてくれる?」っと私に向かって言う。   「はい。分かりました。」っと言い事務所から出ようとすると、  「あっ、美穂ちゃん、これあげる。」っと首に巻く冷感タオルを渡される。  「ありがとう、陽子さん。」っと言い事務所を出て更衣室へと行く。  お昼を配り終わり、陽子さんと一緒に飼育室へ。  「ここを、夏用に涼しくしないといけなくて、ただ1人でやるには広過ぎて。」っと陽子さんが言う。  「そうですよね、1人で、やったら熱中症になる位に風通し悪いからね、それでは、物を片付けますね。」っと言い片付けを初める。  片付けが終わり、掃除をしてると、何やら鼻歌が何処からかする。  よーく耳を澄ませると、陽子さんだった。  「陽子さん?今何か歌ってませんでしたか?」っと聞く。    「あら、聞こえてた、ごめん。私さぁ、気にいった曲とか歌手に、はまると、ついつい仕事中口ずさんじゃうのよね。」っと恥ずかしそうに言う。  (っと言う事は、以前はスカイハイの曲も口ずさんでいたりして)っと思ってると、  「美穂ちゃん、スラッシュって言うバンド知ってる?」っと聞いてきた。  「なんか、聞いた事が、あっ、思いだした、この間車の中のラジオで、確か3人組のバンドでYouTubeがきっかけでブレイクしたって言ってた。」っと答える。  「そう、それ、そのボーカルの子、アリサって言うんだけど、その子の声が凄く良くて、ハイトーンで独特の声してて。」っと少し興奮気味に言う。  「確かに、高い声で特徴ある声だから耳に残るよね。」っと言うと、  「それに、そのスラッシュの音楽も凄くて、ロックに近いけど、ロック過ぎない所がロックを聞き慣れ無い人でも聞きやすくてね」っと完全に仕事忘れて語る陽子さんを聞きながら掃除の続きをしてると、  「美穂ちゃん、聞いてる?」っと言ってきたから、   「ちゃんと仕事しながら聞いてますよ、陽子さん。」っと返す。  「本当に、じゃあ、今度CD貸すから聞いてよ。たまにはスカイハイ以外の曲も良いでしょ。」っと意地悪に言う。  「私、スカイハイ以外の曲も聞いてますよ。」っと返すと、   「そう、美穂ちゃんの車見たら、スカイハイのCDしか無いように見えたから。」っと言う陽子さんに、  「勝手に人の車覗かないで下さい。ちゃんとスカイハイのCDの後ろに違うCDあります。」っと言い返す。  「あら、それは失礼しましたね、それでね、その、スラッシュって言うバンドっとまだ実体が無くて、8月のお盆の時期に、生放送の歌番組に初登場、初テレビ出演で見られるみたいだから、今から楽しみなんだよね、美穂ちゃんも観てよね。」っと言う陽子さんに、  「確か、その歌番組、スカイハイも出演するって圭介君が言ってたから、たぶん観るよ。」っと言う。  「へぇ。そうなんだ、美穂ちゃん、戸葉君ばっかり観ないで、ちゃんとスラッシュも観てよ。」っと言われ。  「ちゃんと観るから大丈夫だよ。っと次は何します?」っとほとんど掃除が終わり、次の作業にうつる。     8月中旬お盆、スカイハイ歌番組出演日  「今日さぁ、スラッシュってバンド出るみたいで初御披露目で俺楽しみなんだよね。」って秀ちゃんが言う。  「ああ、スラッシュね、YouTubeで聞いたけど、あの声何処か聞いたような」っと沢本君が言う。  俺達は、今歌番組のリハーサルをする為にスタジオへと歩いていた。  一番後ろで歩いてた俺に、  「戸葉君、久しぶりだね」っと声を掛けてきた女性が。  「あれ?あの女性って。」っと麻宮君が  「ああ、戸葉君の」っと沢本君が  「元彼女だよな。」っと秀ちゃんが、  振り向いた俺の後ろでメンバーが何か喋ってたが聞こえず、俺は、  「あのー、どちら様ですか?」っと聞いた。それが聞こえた、後ろのメンバーが  「何で俺達が分かって、当の本人が分からないだよ、おい。戸葉君。」っと沢本君が叫び  「落ちついて、沢本君」っと麻宮君が、収める。  「さすが戸葉君です。」っと秀ちゃんが冷静に言う。  (なんか沢本君が怒鳴ってるな)っと思ってると、俺の前に居た女性が、  「私よ、三月亜理砂、覚えて無いの?」っと聞く。  「うーん?えっと、その。」っと俺が考えていると、  「戸葉君、リハーサル始まるよ。」っとリーダーが声を掛けた。  「じゃあ。俺行くので。」っと言い、その女性にお辞儀をして、リーダーとスタジオに向かう、途中、リーダーが  「ねぇ、戸葉君、あの綺麗な女性、戸葉君の知り合い?」っと聞く。    「いや、なんか見た事あるんだけど、思い出さなくて。」っと俺が答えると、    「戸葉君の頭の中ってどうなってるんだか。」っと呆れながら沢本君が言う。  「えっ?何沢本君、あの女性誰か分かるの?ねぇ、教えて、俺さぁ、喉元まで出かかってるんだけど、出なくて気持ち悪くて。」っと俺が沢本君にくっついて言う。  「知らねぇよ。自分で思い出せ。」っと冷たく沢本君が言う。  「えー。そんな事言わないでよ。沢本君。」っと俺が沢本君に聞く  「あのさ、俺思うんだけど、意外と戸葉君って薄情な所あると思わない、麻宮君。」っと秀ちゃんが隣に居た、麻宮君に聞く。  「そうだね、何年前とはいえ付き合った女性を忘れるなんて、けっこう冷たい所あるよね、今の彼女さん、大丈夫かな?」っと心配そうに言う麻宮君。  そんな2人のやり取りを知らず、俺は、沢本君にお願いしていたが、  「えーい、ひっつくな。気持ち悪い。」っと冷たくあしらわれていた。  生放送歌番組本番 スタッフ「それでは、本番入ります。」 司会「本日のアーティストの紹介です。最初に紹介する方は、ライブ真っ只中のスカイハイの皆さんです。」  わぁー、きゃー、沢本君、麻宮君、戸葉君っとメンバーの名前を呼ぶお客さんの声がハイテンションになる。  そして、司会者がアーティストを順番に読んでいく。  司会「それでは、最後のアーティストの方は、今夜初登場で初御披露目になります。スラッシュの皆さんです。」って紹介すると、お客さんが、わぁー、きゃー、素敵。ってスカイハイに負けない、ハイテンションの声が響く。  沢本(彼女が、スラッシュのボーカルだったのか、どうりで聞いた声のはずだ。)っと思う。    戸葉(さっきの女性が、スラッシュのボーカルだったんだね、それにしても見た事あるけど、思い出さない)っと思い、アーティスト席に座る。  すると、隣にスラッシュのメンバーが座り、ボーカルの女性のアリサが俺の隣に来て、  「ねぇ、戸葉君、本当に私の事覚えて無いの?私、戸葉君と同じ歌番組に出るのが夢だったのに。」っと小声で言い、体を密着させてくる。  (やばいな、今日、美穂この歌番組観てるのに、もし、この場面写ったら嫌な思いさせるよな)っと俺が思ってると、  司会「それでは、歌って頂きましょう。」っとアーティストの方にカメラが向いたので、俺は、隣のリーダーに、小声で、  「リーダーごめん。俺、化粧の匂いだめだから席変わって」っと言うと、  「いいよ、戸葉君。」っと席を変わってもらうと、  「ちょっと、戸葉君。」っとアリサが慌てて言う。  「ごめんね、隣が俺になって。」っとリーダーが言うと、  「ふん。」っと言い、少し離れた。  一方、美穂の部屋  生放送の歌番組が始まり、部屋で観てると、司会者がスカイハイを紹介すると、  お客さんの声がひときわ高くなる。  (久しぶりの戸葉君の姿、嬉しいな)っと思いながら、司会者が次々と、アーティストの方を紹介していく、そして、最後に、スラッシュが紹介された。  (へぇ。ボーカルの人綺麗な人だな。後で圭介君にスラッシュの印象聞いてみようかな?)っと思ってると、一瞬、アーティスト席が写った。  (あれ?圭介君の隣に座ってるのって、スラッシュのボーカルのアリサさんだよね、なんか近く無い?気のせいかな)っと思い、スカイハイの出番を待つ。    生放送歌番組スタジオ 司会「それでは、続きまして、スカイハイの皆さんです。宜しくお願いします。」っと紹介され、司会者の脇に座る。 スカイハイ「宜しくお願いします。」っと全員で言い、司会の方と軽く談笑した後、歌のスタンバイに入る。  俺達、スカイハイの出番が終わると、スラッシュの紹介VTRが流れた。  司会「スラッシュの皆さん、本日は、初テレビの生放送ですが、いかがですか?」  アリサ「とても緊張してますが、メンバーの2人と楽しくいつも通り歌いたいと思います。」  司会「それでは、スタンバイの方宜しくお願いします。」  スラッシュ「宜しくお願いします。」っと言い、歌が始まる、ボーカルのアリサのハイトーンの声がスタジオに響く。  (あっ、思いだした彼女は。)っとアーティスト席に座っていた俺は思う。それを隣に居た沢本君が俺の方を見て、  (あの顔は、彼女の事を思いだしたか?)っと思っていた。  そして、生放送の歌番組が終了し、俺達は、楽屋に向かい歩いてると、  「戸葉君、お疲れ様。ねぇ、これからって空いて無い?良かったら少しお話したいんだけど。」っと声を掛けて来た         「戸葉君、先行ってるよ。」っとメンバーが言うのを聞き。  「三月さん。今日君が歌ってるのを聞いて思いだしたよ。三月さんと別れて、もう随分経つから、なかなか思いだせなくて、ごめんね。そっか、夢叶ったんだね、おめでとう。だけど、もう俺には近づかないで欲しいんだ。」っと俺が言うと、  「なんで、私ずっと戸葉君に謝りたかったの、だから私頑張ってアーティストになったの、いつか同じ舞台に立って、同じ目線になってきちんと向きあおうと思ってたのに。」っと三月さんは泣きそうな顔で言う。  「あの時の事今さら謝っても同じ時間は取り戻せないから、俺は今大切な彼女が居るんだ。だから、三月さんも俺の事は忘れて、新しい人を見つけて。じゃあ。お疲れ様です。」っと言い、メンバーが居る控え室に向かう。  「そんな、戸葉君。」っと三月さんは呟いた。    俺がメンバーが居る控え室に入ると、沢本君が、  「さっきのスラッシュのボーカルの子の事思いだしたのか?」っと聞く。  「ああ、俺の元彼女だよ。」っと言う。  「やっと思いだしたんだね、圭ちゃん。確かその彼女さんとは、自然消滅したんだよね?」っと麻宮君が聞く。  「いや、実は、彼女と付き合ってた頃、ちょうど俺達スカイハイの人気が出た頃で、ライブだ、テレビ出演だって忙しかった時、俺と同じボーカル養成所の友達が、彼女が他の男と歩いてるのを見かけて、問い詰めたら、浮気を認めたから、別れたんだよ、俺、そういう行為されるのが嫌いだから。」っと俺が言うと、  「それは、初耳だ。」っと秀ちゃんが言う。  「なんとなく、あの頃は、恥ずかしくて言えなかったんだよ、浮気されたなんて。」っと俺が言う。  「でもさぁ、今の彼女だって、こうやって忙しくてなかなか会えないから、又その可能性も強く無い?」っと沢本君が言う。  「ちょっと、篤君、圭ちゃんにそんな事言っちゃだめだよ。」っと麻宮君が、沢本君に言う。  「彼女は、そんな事する娘じゃないよ。」っと俺が言う。  「そんな自信満々に言っても絶対なんて無いんじゃないの」っと沢本君が言うので、俺は、  「沢本君、絶対なんて言葉は言う物じゃないんだよ、それを言うと過信してまうから、だから俺は、彼女を信じてるから。の方が正しいと思ってる。(そう、美穂があのお泊まりの朝俺に言った言葉だけど)」っと沢本君に言うと、沢本君、秀ちゃん、麻宮君までが俺の方を見て驚いていた。  「戸葉君、なんか格好いいね。」っと急にリーダーが言う。  「あっ、ありがとう、リーダー。」っと返す。  「なんか、戸葉君、急に男らしくなったな」っと秀ちゃんが、  「うん。てっきり篤君につかかって来ると思ったのに。」っと麻宮君が、  「やばいな、戸葉君。」っと沢本君が呟くと、  「お疲れ様です。皆さん支度出来てますか?」っとマネージャーが入ってくる。  「出来てるよ、マネージャー」っと川野君が言う。  「あっ、俺今日、自分の車で来てた、じゃあ、皆お先に。」っと俺が言う。  「お疲れ、圭ちゃん。気を付けて帰ってね。」っと麻宮君が、  「お疲れ、戸葉君」っと秀ちゃんとリーダーと沢本君が言い、俺は控え室を出る。  残ったメンバーは、マネージャーの車へと乗る。  「ねぇ、沢本君、戸葉君の事まずいって言ってたけど、何の事」っと秀ちゃんが聞く。  「戸葉君、彼女にのめり込み過ぎて無いか?俺としては、やることやれば落ち着くと思ったけど、ますます彼女に入り込んでる。」っと沢本君が言う。  「それが何まずいの?篤君。圭ちゃん逆に彼女が居るおかげで、なんか男らしくなった気がするし、良い事じゃないの?」っと麻宮君が聞く。    「確かに、戸葉君が変わってくれれば俺も嬉しいけど、心配なんだよ、その彼女がのめり込ませといて、振ったりしたら、どうなると思う。戸葉君の性格からして」っと沢本君が秀ちゃん、麻宮君に聞く。  「それは、最悪かも、戸葉君ひきずるタイプだから。」っと秀ちゃんが、  「前にそんな事あった時、ちゃんと仕事はしたけど、控え室が圭ちゃんの所だけ、お通夜だった気がした。」っと麻宮君が言うと、ずっと黙って聞いていた、リーダーが、  「沢本君は、心配し過ぎなんじゃない。」っと言うと、前で運転していたマネージャーも  「僕も川野君の言う通りだと思いますよ。」っと言ってきた。  「なんで、そんな事言えるの?マネージャーだって、まだ戸葉君の彼女紹介されて無いよね?」っと沢本君が反論する。  「確かに、そうですが、実は戸葉君に少しだけ彼女の事を聞いたんですが、彼女を紹介したのは、あの河村じゅんさんなんですよ。」っとマネージャーが言う。  「あのお笑い界の帝王の河村じゅんさん」っと秀ちゃんが、  「たしかに、圭ちゃんが「どうぶつ学園」で知り合ったって聞いたけど、まさか河村さんが紹介したんだね。」っと麻宮君が  「あの女好きの河村じゅんさんね。」っと沢本君が言うと、  「沢本君、篤君、失礼だよ。」っと秀ちゃん、川野君、麻宮君が口を揃えて言う。  「あっ、ごめん。つい。」っと謝ると、  「確かに、河村さんは、女好きと知られてますが、噂によりますと、河村さんは、女性を見る目が誰よりも長けていまして、まぁ、長く芸能界に居るからでしょうが、その為、側に居る女性は、容姿だけでは無く中身も素晴らしい女性ばかりで誰か1人を選べないから独身で居ると言う話しもあります。」っとマネージャーが言う。  「へぇ。そうなんだ。」っと感心したように秀ちゃんが言う。   「そんな河村さんが紹介した、女性ですから悪い人では、無いと思ってるんですよ。あっ、川野君着きましたよ。」っとマネージャーが言う。   「じゃあ、お疲れ様」っと川野君が降りる。  「お疲れ、リーダー」っと沢本君、秀ちゃん、麻宮君が言う。  「確かに、河村さんだもんな。」っと秀ちゃんが納得したように言う。  「あっ、そろそろ高井君着きますよ。」  「はい。お疲れ。」っと秀ちゃんが降りる。  「お疲れ様。秀ちゃん」っと沢本君、麻宮君が言う。  「なんか、まだ納得してないみたいだね、篤君。」っと麻宮君が言う。  「うーん。そうだな。やっぱり気になる。」っと沢本君が言うと、  「次、沢本君着きましたよ。」  「あっ、麻宮君、今日の話し戸葉君には内緒な。」っと沢本君が降りる前に言う。  「分かってるよ、篤君、お疲れ。」っと麻宮君が言う。  「でも、マネージャー俺も圭ちゃんの彼女は気になってるんだよね、なんか圭ちゃん彼女と出会ってから随分変わったし、最悪の結果だけは避けたいよね。」っと麻宮君がマネージャーに言う。  「そうですね、そろそろ何か理由をつけて会わせてもらいましょうか、戸葉君に。」っと言うと、  「そうだね、俺も早く圭ちゃんの彼女に会ってみたいし。」っと麻宮君が言うと、  「麻宮君着きましたよ、お疲れ様です。」っと言う。  「うん。マネージャーもお疲れ様、帰り気を付けて帰って下さいね。」っと言い降りる。  (さて、僕は、一度事務所に戻って、報告してから帰らないと、さて、戸葉君には、どんな理由つけて、会わせてもらうか)っと思い車を事務所に向けて走らせる。  8月下旬美穂の部屋。    ピコーンっとラインが鳴る、見ると圭介君からだった。  「美穂、お疲れ、来月のシフト出来てる?」っときた。  「圭介君。お疲れさま、ちょうど今日。出来たよ。」っと返すと、ラインの電話がかかる。  画面を押し、  「もし、もし、圭介君?」っと聞く。    「美穂、こんばんは。どう?体調とか、夏バテしてない?」っと聞いてきた。  「今年は、なんとか大丈夫だよ、圭介君は、ずっとハードスケジュールだったけど、体は大丈夫?」っと聞くと、  「俺は大丈夫だよ、美穂、来月の休み教えて。」っと言うので、来月の休みを教える。  「そういえば、お盆の時の生放送の歌番組観たんだけど、一緒に出てた、スラッシュって言うバンドってどんな感じだった。実は陽子さんがファンでCD貸して貰ったんだけど、やっぱりボーカルの子の声が特徴あるハイトーンの声で、やっぱり生で聞くと違うよね?」っと言うと、  「うん。凄かったよ、曲も歌う声も印象に残るバンドだと思う、美穂、俺美穂に、隠し事したくないから、はっきり言う。スラッシュのボーカルの子のアリサって娘は、俺の元彼女なんだ。」っと衝撃な言葉に、    「えー。」っと夜なのに大声を出してしまった。  「本当なの?圭介君。」っと聞く。  「うん。でも随分前の話しだよ。だから実際会っても全然分からなくて、彼女が歌ってる姿を見て思い出したんだ。」  「そうなんだ、あっ、だからなのかな、ちらっと映った、圭介君達が座ってる席にそのスラッシュのボーカルの子が近くに居たのって。」  「えー、映ってたのか、ごめん。美穂、あの後ちゃんと、隣のリーダーに席変わって貰ったんだけど。」  「あー、だから。次映った時に違う席に、座ってたのね、色々納得したよ。私に気をつかってくれてありがとう、圭介君。」  「当たり前だよ、俺だって、美穂の隣に知らない男が座ってたら嫌だもん。」  「うん。そうだよね、それで、お休み合いそう?」っと聞く。    「美穂、聞かないの、元彼女の事気にならない?」  「気にならないって言ったら嘘になるけど、随分前の事だし、今は圭介君と次の約束の話しの方が大事だし、私も元彼の話しは圭介君にしてないんだし。」  「うん。でも、俺は、美穂の元彼気になるかも。前に里穂ちゃんに紹介された時、あんな最低男と一緒にしないで言ってたから、どんな男か気になって。」  「圭介君、記憶力良すぎ、もう、忘れてよ、そんな事。今は、圭介君が居るんだから、それで良いの。」  「美穂が嫌がるなら聞かないけど、じゃあ来月の話ししよう。」っと言い、  圭介君と来月会う約束の曜日を決めた。 私は、クローゼットの方を見て  (やっと、去年着れなかった、チュニックが着れる。楽しみだな。)っと思った。    9月中旬、圭介君と湘南での初デート  朝起きて、窓の外を見ると、天気は快晴  「うーん。絶好のデート日和だ。」っと大きな1人事を言う。  「美穂、起きたなら朝ご飯出来てるから降りて来なさい。」っと下からお母さんが言う。  「はーい。今行く」っと言い、顔を洗って、台所のダイニングテーブルの椅子に座る。  「美穂、今日は、戸葉君とデートでそのまま泊まるのよね。」っとお母さんが聞く。  「そうだけど、お父さん何か言ってた?」っと聞く。  「特に、ただ、美穂は今日は帰って来ないのかっと面白くなさそうに言ってたけど。」っとお母さんが言うね。  「やっぱりね。」っとご飯を食べながら言う。  「美穂、お父さんの事は、気にしないで、なかなか会えないんだから、今日は戸葉君と楽しんで来なさい。」っとお母さんが言う。  「うん。」っと言い、ご飯を食べ支度をして、  「お母さん、行って来ます。」っと言い家を出る。  「行ってらっしゃい、美穂、お土産話し楽しみにしてるからね。」っと見送る。  私は、車に乗り、駅に向かう。今日は、私の最寄り駅に圭介君が迎えに来る。  先月借りた、月極め駐車場に車を停め、駅に向かい、圭介君を待つ。  しばらくすると、黒い大きめな車が、駅で待つ私の前に。  「おはよう、圭介君。」っと言い助手席に乗る。  「おはよう、美穂もう車停めたんだね。」っと圭介君が聞く。  「うん。あれ?私言って無かったかな?月極め駐車場借りたの。」っと言うと、  「そうなの?」  「うん。ほら圭介君の所行く事多そうだから月極めの方がお金安いかなっと思って。」っと言うと、  「月、いくらの?」っと聞く。  「月、3千円だよ。」っと言うと、  「安い、東京で駅前で借りたら場所によっては1万するよ。」  「そうなんだね。茨城は田舎だからね。」っと言うと、  「そんな田舎じゃないと思うけど、でも人は少ないから、こんな事は出来る。」っと言いキスをした。  「美穂、今日は晴れて良かったね、行こうか。」っと私から顔を離し言う。  「うん。」  一路、湘南へと車を走らせる、車の中は、圭介君の好きな曲が流れ、圭介君がライブの話しやメンバーの話しをしたり、私の夏の出来事を話したりしてると、海が見えてきた。  「わぁ、海だ。少し窓開けて良い?」っと聞くと、  「どうぞ。」っと言い圭介君も窓を開け、  「うーん、潮の香りがするけど、少し寒いね」っと圭介君が言う。  「本当だね、まだ9月だけど、海風が冷たいかも」っと言い、窓の外を見る、  「今日は、天気が良いからまばらだけど人が居るね。」っと圭介君が言う。  「大丈夫?圭介君。」っと心配そうに聞く。  「大丈夫だよ、バッチリ変装したから。」っと言う。  そう、今日の圭介君は、帽子にメガネにマスクの完全変装状態だけど、服装は、カジュアルな感じで格好良い。  (こんな、変装で本当に周りに気がつかれないか心配だけど。)っと思ってると、  「美穂、水族館見えて来たよ」っと言って来た。  (でも、せっかくの圭介君との初デートなんだから余計な事考えず楽しまないと)思い、  「本当だ。私、江ノ島水族館初めてだから楽しみ、どんなお魚居るのかな?」っと言う  「俺も水族館久しぶりだから楽しみだよ。」っと嬉しそうに言う。  「圭介君、お魚好き?」っと聞くと、   「嫌いじゃないよ、スカイハイのリーダーが魚釣りが趣味だから色々聞かせるし。」っと返す。  「へぇー、そうなんだね」っと言う。  そんな話しをしてるうちに水族館に到着。 駐車場に車を停めて、  「それでは。行きますか。美穂。」っと言い、帽子とマスクをする。  「うん。」っと言い車を降り、恋人繋ぎをして、水族館に向かう。  館内を見て歩く、場所によっては圭介君の解説付きで、色々な魚を見て行って、イルカショーも見て、昼食はカフェでお昼を食べ、水族館デートを楽しむ。  (意外と、チラチラ見る人はいても気づかれないものなんだね)っと少し安堵する。  水族館を出て、海へと向かう、午後になり、人も少なくなってきていた。  「少し、肌寒いね、圭介君。」っと私が言うと。  「そうだね、美穂そのチュニック可愛いいね。」っと言う。  「うん。圭介君とのデートの為に買ったんだよ」っと言うと、  「うん。似合ってるよ。」っと言ってくれた。  しばらく海岸を歩き、人気が無い所に着くと、ふいに圭介君がキョロキョロして、マスクを取り、  「美穂こっち来て。」っと呼び、圭介君の横に来る。  「美穂、撮るね。」っとスマホを取って、自撮りモードにして、ツーショットを撮ろうとする。  「美穂、笑顔だよ、はい。チーズ」っと初のツーショット写真を撮る。  「うん。良い感じに、撮れた。どう?美穂。」っと満足そうに言って私に見せる。  「うん。なんか圭介君との写真良いね。」っと私も満足そうに言う。  「この写真後でラインで送るから、現像は、俺のスマホの方が良いか、画像綺麗だし。」っと言う圭介君に。  「えっ?」っと返す。  「ん?ほら、今年の正月、美穂の部屋に行った時、里穂ちゃんに貰った写真立て、俺とのツーショットの写真入れるって言っただろう?」っと言う。  「覚えてたの?圭介君、本当に記憶力良いね」っと感心したように言うと、  「美穂との事は何でも覚えてるよ。俺も写真立て買ったんだから。」っと言う。  「ありがとう。圭介君、現像楽しみにしてるね。」っと返す。  「俺も今から楽しみだよ。」っと言い、しばらく海岸で、ゆっくりした時間をする、人が少なかったからなのか、急に、  「美穂。」っと呼んで、写真を撮られたり、お返しに圭介君を撮ったりして、やっと恋人同士の時間を満喫した日になった。  君に触れて 煌めき出す 七色のフレーズ  強く(そっと)からむ(指に) 熱を感じてる  どんな顔で どんな声で 伝わるかな  時間を止める このままもっと ふたり    夕方になり、東京に戻り、予約してた、個室のお店で夕飯を食べる。  「やっとガッツリ食べられる」っと圭介君が言い、お肉料理をお腹いっぱい2人とも食べた。  「圭介君、ご馳走。美味しかったよ。」っと私が言うと、  「俺も久しぶりに沢山食べて満足だよ、後は、美穂を食べるだけだよ。」っと言う圭介君に、  「私は、食べ物じゃないよ。」っとふてくされて言うと、  「あはは、ごめん、ごめん冗談だよ。」っと私を見て謝る。  「もう、圭介君ったら。」っと言い、車は、圭介君のマンションに向かう。  圭介君のマンションが近くなり、今日も公園で降りるのかなっと思ってると、  「もう、来てたのか?」っと呟く、圭介君の視線の先には、マンションの裏の駐車場に停まって居た、ワンボックスカーだった。  「美穂、紹介したい人が居る」っと真剣な顔で私に向かって言う。  「うん?」っと言うと、圭介君は車を駐車場に停め、一緒に降りて、圭介君は、ワンボックスカーの所に行く。  「もう来てたんだね、マネージャー。」っと声を掛ける。  「はい。すみませんね、楽しいデート中にお邪魔してしまって。」っと言い、車から降りる。  「いや、彼女がこっちに来てる時にしか紹介出来ないし、美穂。」っと圭介君が呼ぶ。  私は、圭介君の隣に来る。  「こちら、俺らスカイハイのマネージャー、そして彼女が俺の彼女の佐川美穂さんだ。」っと圭介君がマネージャーと呼ばれた男性の方を紹介する。  一瞬、急な事で頭が真っ白になったが、慌て、  「初めまして、佐川美穂です。」っとその男性にお辞儀をして、挨拶をする。  「初めまして、佐川さん。私、スカイハイのマネージャー兼運転手もしています。木元正也と言います。いつも戸葉君がお世話になっております。今日は、急にすみません。楽しいおデート中に。」っと名刺を渡して、挨拶をする。  (初めて、圭介君の芸能事務所の名前知った)っと貰った名刺を見て思ってると、  「美穂、先に部屋に行っててくれる?」っと圭介君が言う。  「うん。それでは、失礼します。」っと木元さんにお辞儀をして言う。  「はい、それでは、また。」っと木元さんが返す。  (また?)っとちょっと不思議に思いながら、マンションへと向かう。  「約束通りに彼女に会わせたからな。」っと俺が言う。  「ええ、ありがとうございます。それにしてもびっくりしました。戸葉君があんな地味な方とお付き合いしてるとは。」っとマネージャーが言う。  「はぁ?何それ。」っと俺が機嫌悪く言うと、  「いえ、今まで、お付き合いしてた女性は、化粧の濃い、派手目な女性が多かったので、あんな薄化粧で大人し目の女性だとは思わなくて。」っとマネージャーが言う。  「たまたまだよ、それよりもマネージャー分かってるだろうな、俺の言いたい事。」っと俺が聞く。  「分かってますよ、ちゃんと控えめにしときますよ、高井君の時で懲りてますから。」っと言う。  「なら、良いが、じゃあ、俺行くよ、美穂待ってるし。」っと俺が言うと、  「はい。それでは、明日午後からお仕事忘れずに、楽しい夜をお過ごし下さい。」っとマネージャーが少し嫌み混じりに言う。  「はい、はい、じゃあ、又明日。」っと言い、マンションに向かう。  戸葉君の背中を見送り、車に乗り、事務所に向かった。  (佐川美穂さん。さて、どんな方なのか)っと思いながら。  俺は、部屋に着き、鍵を開けると、美穂が、  「お帰り、圭介君」っと言ってくれて、何だか物凄く嬉しかった。  「ただいま、美穂。」っと笑顔で返す。  俺は、ベランダのカーテンを閉めた。  「圭介君、びっくりしたよ、急にマネージャーに会わすから。」っと言う。  「ごめん。美穂、何か言っちゃうと、せっかくの初デートだから、その事が気になって楽しめないと思ったから、本当にごめん。」っと手を合わせ謝る圭介君に、  「まっ、そろそろは、そんな時が来るのか想像してたけど、私と圭介君、お付き合いが始まってそろそろ1年になるし。」  「うん。俺もそろそろマネージャーとメンバーに会わせないといけないなとは思っててた矢先に、この間マネージャーが、「もうそろそろ会わせて頂けませんか?」っと言われて。」っと、そう言いながら圭介君がキッチンに向かう。  「美穂、コーヒー飲む?」っと聞く。  「うん。」っと答える。  私は、テレビがある部屋のソファーに座り、圭介君が淹れてくれているコーヒーを待つ。  しばらくして、  「はい、美穂」っとコーヒーを渡し、私の隣に座り、  「美穂、もしかしたら、マネージャーが美穂の事を調べて、会いに来るかもしれない。俺は、そうゆう事はして欲しく無いんだが、社長の方針でお付き合いしてる人の身元を確認するみたいで。」っと私の方を見て申し訳けなさそうに言う。  「仕方ないんじゃない?圭介君の仕事上、まっ、正直言うと、色々調べられるのは嫌だけどでも調べて問題が無いと分かれば安心して圭介君とお付き合いが出来るし。あっ、でも私1つだけ問題があった。私が高校生の頃に精神疾患を発症して、クリニックに通ってた事って大丈夫かな?」っと心配そうに聞く。  「たぶん大丈夫だと思うよ、俺は、前に言ったと思うけど、俺は、そのままの美穂を好きになったんだ、だからもしメンバーやマネージャーが何か言っても説得して納得してもらうつもりだよ。」っと私を見てはっきり言って、少し胸のつっかえが取れた気がした。  「ありがとう。圭介君。」  「それに、前に高井君の時に色々あったからそんなに、事細かく調べたりしないと思うし。」っと言う圭介君に。  「そっか、秀ちゃんの時になんかあったんだね。」  「そう。なにも社長の命令だからって、彼女さんの親族とか、そっちの方まで調べちゃって、あの冷静な秀ちゃんが、社長にやり過ぎだって怒鳴りこみに言って大変だったみたいで、あれから社長も少しは反省したみたいでね。」  「そんな事しないで、もっとタレントさんを信用してあげれば良いのにね。」  「俺もそう思うよ。」っとため息混じりに言う圭介君。    しばらく黙ったまたコーヒーを飲んでいたが、急に何か思いだしように、圭介君が、  「あっ、話し変わるけど、美穂今日さぁ、湯船入れるから、浴槽でイチャイチャしよう。」っと言い出した。  「えっ。」っと嫌そうな声で言う。  「お願い。美穂。美穂と密着してイチャイチャしたい。」っと手を合わせてお願いする。  「もう、仕方ないなぁ。私が圭介君のお願い断れないの知ってて言うんだから」っと半ば諦め声で言う。  「うん。ありがとう美穂大好きだよ、その後のベットでも濃厚な時間過ごそうね。さて、お湯入れてこよう。」っと嬉しそうに浴室に向かう圭介君の後ろを見ながら。  (ヤバい、今夜も圭介君に体力奪われそう。)っと思った。  
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